盛岡タイムス Web News 2013年  3月 19日 (火)

       

■  〈イタリアンチロルの昼下がり〉170 及川彩子 タウンシップの休日

     
   
     

 2月の初め、パドヴァ大学天文学部に勤める夫の仕事に同伴、私たち家族は10日間ほど南アフリカのケープタウンを訪ねました。

  アフリカ大陸最南端の喜望峰は世界遺産。年間を通して、晴天続きのこの地域は、天文台がフル回転。各国から研究者が集うのです。

  南アフリカは、17世紀、オランダ人の航路基地として発展、後にイギリス支配を受け、20世紀には、人種隔離政策アパルトヘイトが世界に深い影を落としました。今は、古来のアフリカとヨーロッパが共存する「虹の国」と言われます。

  ベネチア空港から15時間。ケープタウンは、高層ビルとイギリス人好みのしゃれた邸宅都市ですが、有刺鉄線や侵入者除けの高圧線が張り巡らされ、ホテル前にも警備官が立ち、タクシーも駐車場内に乗り付けることができません。

  アパルトヘイトに別れを告げたものの、今も不安な治安。人口の2割の白人によって、経済発展しているのですが、アフリカの「ヨーロッパ都市」に、どこか違和感を覚えるのでした。

  せっかく来たのだからと、私たちは思い立って、タウンシップに出掛けました。タウンシップは、アパルトヘイトで隔離された黒人居住地。観光客の単独行動禁止の地区を、公認の黒人ガイドと巡るのです。

  都市部から車でわずか10分の所に、そのバラック街がありました。一軒一軒が、柱とトタンの簡単な住宅で、トイレ・水道は5軒に1カ所。各家には、冷蔵庫とテレビ程度の電気器具があるだけ。  

  ここには商店から床屋・祈祷(きとう)・占いの館まで、何でもありますが、若者の多くは、ケープタウンに働きに出ているのだそうです。

  私たちを見て「ハロー」と気軽に家に招き入れる大人たち。裸足で走り寄り、抱っこをねだる子どもたち〔写真〕。その瞳に、本物の「虹の国」を見たような気がしました。


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