盛岡タイムス Web News 2013年  3月 22日 (金)

       

■  〈潮風宅配便〉142 草野悟 黙々と 丁寧に うまい

     
   
     

 県庁で仕事をすると、昔は必ず桜山に立ち寄ったものです。よく行ったのは「松ちゃんラーメン」と「とりまさ」でした。「松っちゃんラーメン」は、仲の良い夫婦で手もみラーメンが売りでした。しばらくして郷里の山田町に店を移しました。何度か通い、「松ちゃん、山田のカキを使ったギョーザを作って」と新商品開発の依頼をしたのですが、完成品を食べないうちに被災してしまいました。店はもう跡形もありません。夫婦で盛岡に戻ったという風のうわさです。元気にしているかなあ。

  もう一軒は焼き鳥「とりまさ」です。ワイワイガヤガヤと小うるさい県庁職員たちと、1本90円、100円の焼き鳥を食べながら、あーでもない、こーでもない、と記憶に残らない会話が弾む店でした。しばらく遠ざかっていましたが、つい最近、宮古からの106号の運転ストレス解消のため、連続して通っています。

  「とりまさ」の親方は、高倉健のように寡黙です。あまり笑いません。黙々と注文の品を焼きます。冗談は言いません。その串一本に全身全霊、見事な串を昼間に仕込み、夜に備えます。「親方、銀皮2本」「…」。返事をしないのではありません。しぶい声で、高倉健のように「へい」と多分言っているんです。どんなに混雑していても注文は決して忘れません。絶妙の焼き加減で、スーッとカウンターの皿に載せます。卓越技能士、高倉健風親方の塩ふりの技と焼き加減のタイミング。舌の上にチュルルーと転がる鳥の脂が、いいあんばいにうまみ成分に変化し、それをヨダレが追いかけるという、何とも素晴らしい関係が生まれる焼き鳥なのです。気が付くと、優に20本くらいの串がたまっています。糖質制限ダイエットにふさわしい麦焼酎のお湯割り。皮、ハツ、軟骨、砂肝、メニューの左端から全部注文しないと終わりません。

  超格安、気楽、気軽、うまさ抜群、焼き鳥の部「勝手に世界遺産」に登録です。
(岩手県中核観光コーディネーター)


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