盛岡タイムス Web News 2013年  4月 13日 (土)

       

■ 考え方 なお隔たり 福島原発事故による風評被害 東電側の指針に納得できず 農林漁業と加工・流通業 賠償対象拡大で説明会

 原発事故による農林漁業や加工・流通業の風評被害について、東京電力(東電)が先月から損害賠償請求の受け付けを開始したことを受け、県と東電は12日、盛岡市内で説明会を開いた。損害賠償の範囲は拡大されたが、事故発生時から生じた被害に対し全面的な賠償を求める県や被災事業者などと、東電側との考え方には、なお、違いもある。今後、県や市町村、関係団体などが協力し、各地で農林漁業者や事業者向けの説明会を開いていく。

  会議には市町村や関係団体の関係者ら約130人が出席した。東電が示した損害賠償の範囲や指針に対する県の考え方を渡辺英浩放射線影響対策課長が説明。このあと、東電の福島原子力補償相談室東北補償相談センター=仙台市=の小松日出男所長らが、東電側の方針を示し、円滑な損害賠償請求手続きへの協力を求めた。

  東電側は、これまで、国の原子力損害賠償紛争審査会で決定した「福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針」を損害賠償の基本的な根拠としている。1月の中間指針第三次追補で、農林漁業・食品産業の風評被害に追加する新たな産品・地域が明示されたため、賠償範囲を見直し、拡大。3月27日から農林漁業、加工・流通業の風評被害に対する損害賠償の受け付けを始めた。

  農林水産物の風評被害で、新たに損害賠償の支払い対象となったのは▽農産物(茶や畜産物を除く食用)▽林産物(食用)▽水産物(食用および餌用)▽牛乳・乳製品▽家畜の飼料、薪(たきぎ)木炭▽家畜排せつ物を原料とする堆肥―。風評被害による売上高減少額から出荷経費の減少額を差し引いた「逸失利益」、取り引き先の要求などで放射線検査の実施を余儀なくされた場合の検査費用などを賠償の対象に挙げている。加工・流通業では、主な原材料として風評被害の認定対象となる農林水産物や牛肉を取り扱っている事業者が対象となる。

  いずれも、中間指針が策定された2011年8月5日以降の風評被害を対象とし、それ以前の風評被害は、相当因果関係の説明を被害者側に求めるなど、被害を受けた生産者や事業者の実態から見れば、なお、不十分な点が多い。放射性物質の検査も自主的に実施したものや、そのために購入した機器は損害賠償の対象から外れている。東電の小松所長は「今回の見直しがスタートであり終わりではない。個別の事情もよく聞き、協議していきたい」と理解を求めた。

  説明会では▽東京電力の損害賠償基準に記載されていないことについても賠償を受けられる可能性がある▽東京電力からの請求書類を急いで出さないと権利を失ってしまうということはない▽いったん東京電力に請求書を出しても、他の損害を請求する権利がなくなるものではない―など、日本弁護士連合会がまとめた注意事項も紹介した。

  県の渡辺課長は「県として東電側から示された損害賠償の内容について納得しているわけではない。東電側の指針に沿って損害賠償請求すれば早期に賠償金が得られるメリットはあるが、合意してしまえば、後から賠償範囲を拡大するのは難しくなる。請求手続きは中身をよく理解した上で行ってほしい」と話した。

  説明会に参加した水産加工業の関係者は「岩手の水産加工の根幹はサンマ。震災後、早期に水揚げを再開したが、関西方面の業者から岩手産のものは受け入れてもらえず、大量の在庫を抱える結果になった。在庫を裁くためには4割程度の値でしか売れない」などと厳しい現状と早期の賠償を訴えていた。


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