盛岡タイムス Web News 2013年  4月 30日 (火)

       

■  〈あなたへの手紙〉 「希望」金野清人

   
忌まわしいあの日
古里の風景は巨大津波に揉まれ
一気に崩れ
すべての輪郭が波に揺らめいて
高田松原の一本の松だけ残して
消えてしまった

いま
目を凝らすと
たくさんの死を呑み込んだ広田湾は
まるでうそのように凪ぎ
青インキを溶かしたように
いっそう青み
ゆったりと
鎮まり返っている

この春
仄かに明るむ浜辺で
命拾いした気仙椿が
にっこりと微笑んでいた

屋敷跡のコンクリの裂け目から
ど根性水仙が
鮮やかに咲き誇っていた

不自由な仮り住まいの人々にも
辛抱して立ち上がれば
かならず
希望の明かりが差して来る

貧しい仮設住宅の団地にも
きっと
子どもたちの笑い声が
高らかに木霊する日がやってくる

悲嘆にくれる古里の人々に
こぼれる笑顔を
現(うつつ)に



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