盛岡タイムス Web News 2013年  6月  6日 (木)

       

■  〈風の筆〉4 沢村澄子 肴町商店街(表)

 勤めているカルチャー教室の発表会があった。年々進む大作化に、作品が会場に入りきらず、「肴町商店街にも飾らせてもらえないかなぁ…」「聞いてみます」などという会話が聞こえていたが、わたしは夢みたいな話だと聞き流していた。

  ところが、しばらくして「先生!決まりました!11店舗協力してくださるそうです!」と報告され、絶句。と同時に次々湧き上がる不安。「一体、どうするの?」しかし、こんなオオゴトが決定しているとは、既にたくさんの方々のお骨折りがあったに違いなく、「ええええぃっ!」「やるっきゃない!」と覚悟して、しかし、その知らせから会期まで、わずか1カ月しかなかった。

  「決まった」と言われてもどういう決まり方かも分からないから、翌日早速、商店街を回る。大事な店舗に作品を掛けさせていただけるのはありがたいが、もしやのご迷惑が起こることもご了承の上だろうか。お買い物はナシで見学だけしていかれるお客さまに、お店の方が疲弊しないだろうか。お買い物のお客さまにご迷惑になるようなことはないか…。などなど、心配は尽きず。   

  ところが、ある社長さんいわく、「まぁ、ちょっとそこへ座りなさい」「商売ってもんはね、いいも悪いも丸抱えなんだよ。そんなに簡単に答えの出るもんじゃないんだ。結果が出るまでに何年もかかる」。

  また、別の社長さんは「肴町商店街は地域密着型。コミュニティーの場という使命も担っている。恵まれた環境を守りながら、地域社会のお役に立てれば。どうぞ自由にやって!」と、逆に私たちを励ましてくださった。で、この社長さん、搬入時にはついに「こっちを抑えた方がいいんじゃないかな…」と作品を貼りに自ら脚立に上られ、その華麗な助っ人ぶりから「ナイスな社長さん」というニックネームを授与されることに。

  マネキンを減らして場所を空けてくださったり、商品を整理して作品を置いてくださったり、「場所は提供できないけどチラシは置いてあげるよ」と告知に協力してくださったり、他にも、ちょっとやそっとでは書ききれないほどの商店街の皆さんのご支援、ご協力があって、作品発表には最高の舞台が用意された。

  書がギャラリーを飛び出し、道行く人々にも見ていただくことができた。こんなにうれしいことはない。

  出品したメンバーはウインドーやお店の中で商品と一緒に並んでいる自分の作品にどこか誇らしげで、その高揚をピークに打ち上げへ突入するから、ビールのピッチャーが次々に空く。飲み放題で良かった。

  しかし、良くない翌日の二日酔い。解消策のお風呂で、あるお店の、何をお願いに行っても「ウチはいいですよ(大丈夫)」しか言わない奥さんのことを思い出す。

  そう言った後に必ずニコッと笑うその奥さんの笑顔を見ているうちに、なぜか泣けてくる日があって、わたしはそれがひどく不思議だったのだけれど、湯船で気付くに、あの笑みは「布施」でしたね。

  肴町商店街の皆さん、本当にありがとうございました。  (盛岡市、書家)


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