盛岡タイムス Web News 2013年  6月  16日 (日)       

■ 〈ジジからの絵手紙〉39 菅森幸一 「太陽灯」

     
   
     

 終戦直後の公立の小学校に「日焼けサロン」があったなんて君たちには信じられないだろう。ところがジジたちの櫻城小学校には理科室だか保健室だか忘れたが、そのどちらかに「太陽灯」と呼ばれている「人工日光浴機」があったんだ。

  この最新鋭の装置は金属製の円筒形で、中央には蛍光色のまばゆい光がきらめいており、その周りをあたかも日光浴をするかのようにサングラスをかけた裸の子どもたちが取り囲むんだ。

  これに参加できるのは比較的病弱な子が優先されたが、当時の子どもたちは全員といってもいいほど栄養不足の虚弱児みたいなものだったから、毎日交代でこの中で人工太陽光を浴びたものだった。

  裸電球の白色光とは比較にならない夢幻的な人工光、ジージーという神秘的な音、さらに匂ってくる、いかにも科学的な芳香は、当時の子どもたちに現実を忘れさせるに十分な魅惑的な空間だった。紫色の朧(おぼろ)げな光の中に浮かび上がる黒眼鏡をかけた異様な裸の集団は、まさに空想科学小説の挿絵そのままで、ジジは首を長くして順番がくるのを待っていたものだったよ。


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