盛岡タイムス Web News 2013年  8月  6日 (火)

       

■  〈詩人のポスト〉 「蝉」斎藤駿一郎


   
なんとおびただしい地球の穴
誕生の穴
臍の緒のない虫
小さい体躯に鎧を着た小さい虫

暗黒の長さで鎧を造り続け 出てきた地球の表

お前達は朝から
暑さの最中全山ゆらし歌うのだ

お前達は夏のシンボル
お前達がいない夏などは
死んだ季節
だから
お前たちが生れてきた甲斐があるように生きよ

なんと美しく哀しい言葉…蝉時雨
次から次へと蝉がなく 啼く 泣く
透明な光の音が雨となって降る…
なんと心をかきたてる無常観よ

限りある刻をきざんで山を鳴動させよ
激しくなけ 啼け 泣け
次から次へと蝉がなく
山の動くまで…

もう蝉のいないうつろの秋

ふけばとぶひとつの空蝉を掌にすれば
あの夏の日に全山ないた わが命の同胞 蝉、蝉、蝉の
一つの軽いちっぽけなもののあまりにも重い


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