盛岡タイムス Web News 2013年  8月  11日 (日)

       

■  〈ジジからの絵手紙〉43 菅森幸一 蝿騒動


     
   
     

 戦後しばらくの間、日本の衛生状態は最悪だった。いろんな害虫が大量に発生し病気の原因となったり、食料不足による栄養不良と重なり国民の健康は危機的状態だった。なかでも蝿(はえ)は通常いずこにでも発生する厄介な虫だが、これを防ぐ古くからの知恵として、自然の通風によって食料を長持ちさせようとする狙いも兼ね、箱形の木枠の周囲に細かい金網や麻を張った「蝿帳」というものがあった。また、四本骨で傘のように開閉し食卓の上にかぶせる「蝿不入」という物も重宝された。

  天井からぶら下げて粘着テープに飛んで蝿をくっつけて取る「蝿取りリボン」やガラスの容器に餌を置いて蝿の侵入を待つ「蝿取り器」もあったが、いずれも消極的防御的なもので効果は薄く、何といっても積極的攻撃的「蝿叩き」が物を言った。

  わが家では時々蝿取り競争が行われ、優勝者には母さんから御褒美が出る。大いに張り切って家中駆け回ったジジの収穫はわずかで、場所を動かず一発必中の技をふるった父さんが圧倒的に優勝し、その晩は配給の合成酒(醸造によらずアルコールに人工香味料をつけた酒)をうまそうに飲む父さんをうらやましく眺め口惜しがったものだった。


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