盛岡タイムス Web News 2013年  8月  25日 (日)

       

■ 杜陵随想 心が和む色えんぴつ 藤島弘子

 3年前の秋、私は印象的な色えんぴつアートに出合った。以前から花の絵を描くのが好きで、水彩・アクリル・岩絵の具など、さまざまな画材を用いて楽しんできた。だが、色えんぴつは、あまりにも身近すぎて、逆に色彩表現画材としての発想がなかったのである。

  ところが、たまたま立ち寄った展覧会で見た作品にひかれた。それは長くてまっすぐな茎、丸い花、茎の先を彩るコロコロとしたつぼみの、タチアオイの絵。小さな庭の囲いから、伸びやかな立ち姿を見せている花々の風景が、色えんぴつで鮮やかに描かれていた。素朴な夏の花が、とてもあでやかに感じられたので、しばし見入った。

  どんな時でも「思い立ったが吉日」を実行に移す私は、早速色えんぴつアートの入門書を買い求めた。テキストを読み進めていくほどに、その魅力がつまびらかになっていく。私が最初に感動を覚えたのは、色えんぴつ以外に道具は何も要らないこと。子どものころから親しんできた身近な画材は、なじみやすく手軽な上に、見る人に感動を与える作品をも生み出せるのだと、感銘を受けた。

  次に驚いたのは、表現の多様性。優しいタッチで塗ればパステル画のような柔らかい色合いになり、強く塗れば油絵のような雰囲気を醸し出す。上手に筆圧をコントロールすれば、描写の幅が限りなく広がっていく。

  そして、さらなる色えんぴつの面白さは、色彩が放つパワーでリフレッシュできること。直接紙の上で色を重ね、新たな彩を作り出す過程に魅力を感じる。同じ色を塗り重ねても、最初に塗った色の濃さを変えると、仕上がりが変わってくる。グラデーションをつけると、一色だけで塗っても立体感が出て、色に表情が生まれる。このように細やかな色使いの機微に触れるとき、私は色彩に癒やされるのである。

  ところで、私は絵手紙による文通を始めて13年になるが、はがきにも色えんぴつで、心にとまったきれいなもの、おいしいものを描き添えている。自分で生けた花や甘味処で遭遇した麗しいスイーツをスケッチするのも良い。

  誰かにあげようと思って描く絵には、特別な楽しさがある。「お元気ですか?」のメッセージとともに、温かな思いを絵に託し、相手に送る。相互性のあるやりとりを楽しむ一方で、自分自身を見詰め直すひとときには、心が和む色を使い、描きたいものを自由に表現している。

  色が人の心に大きく影響を与えることは、よく知られている。ゆとりを持って意欲的に毎日を過ごすためにも、色の持つパワーを知り、上手に生かしてリフレッシュしたい。カラフルな色えんぴつを手に、好きなものを自由に表現すれば、心が和む。色えんぴつアートで心をほぐし、穏やかな時を過ごしている。
(盛岡市高松)

 


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