盛岡タイムス Web News 2013年  8月  27日 (火)

       

■  〈詩人のポスト〉 「夏水仙」 藤野なほ子


   
  今年 久しぶりに夏水仙が咲いた
  ここ数年土の中では確かに生きていて
  春先きには 緑の芽が出揃うが
  花は咲かなかった
 
  薄桃色の花が 変らない顔で
  線香花火のように咲いている
  まわりの濃い緑の中で
  夢から浮き出たように
 
  お盆の日
  妹達と親戚の家を訪ねる
  ここ数年の間に
  相ついで他界してしまった従兄達
  仏壇には沢山の花にまじって
  夏水仙が飾られてあった
  どの家でも まるで申し合わせたように
 
  代替りで続いてきた従兄達の農園は
  都市化の中で それぞれに閉じられ
  場所も住宅も変ってしまった中で
  夏水仙は ここにいると言うように
  目をぱっちりとあけている
 
  家の夏水仙も
  子どもの頃から何げなく咲いていて
  引っ越しの時 掘り起して持ってきた
  昔 父が植えた花  きっと
  父達兄弟がそれぞれに植えていたのだ
  みんな代替りしてしまったが
  花は今も家人と共に生き続け
  昔と今を
  なつかしく語りかけてくるのだった
 


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