盛岡タイムス Web News 2013年  12月 18日 (水)

       

■  〈口ずさむとき〉364 伊藤幸子 「国際交流」


 高齢者(エルダー)の男声合唱誇りかに「秋陣営の霜の色」とぞ
                                       橋本喜典

 久々に世界地図を見ている。「ザイストはオランダ中央部のユトレヒト州にある。アムステルダムやハーグから車で一時間ほど」と読み、私の持っている最大画面の地図をたどる。

  12月1日、木村悌郎先生の「時空を超えた絆」出版祝賀会が開催された。山田町ご出身で、平成4年から8年間、同町教育長を務められ、教育界、音楽界はもとより、先生の幅広いご活躍の伺われるお祝い会だった。

  終始、音楽の余韻にひたりながら、私は帰るなりこのご本を読み始めた。あまりにも浅学のはかなさ、私は江戸時代のオランダ船ブレスケンス号の海難事件を知らなかった。海に遠いとはいえ同じ県内のこと、無知蒙昧(もうまい)の自分が恥ずかしい。

  その事件とは寛永20年(1643)6月10日、オランダ船ブレスケンス号(船長スハープ、乗組員60人)が大浦沖の沢に着船。将軍家光の鎖国の時代だが、大浦の人たちは水と食糧を求める異国の人々を手厚くもてなした。

  時は流れて平成5年、山田町ではブレスケンス号入港350年の記念行事を開催することになった。ブレスケンス号事件は先人の残してくれた貴重な財産、それを21世紀の国際交流の足がかりとしよう。国際交流が進展すれば、夢と希望の持てる中学生を育むことができる。荒れる中学校から脱却できる。

  こうして同年7月29日、山田町中央公民館にて記念式典が行われた。式は日蘭両国の国歌吹奏で始まり、オランダ島での植樹や記念碑の除幕式もなされた。オランダのローランド・ファン・デン・ベルフ駐日大使夫妻はじめ多数の出席者であふれ、友好文書の交換によって今後の日蘭交流の前途も見えた。

  やがて平成7年、「山田町合併四十周年記念事業」としてオランダから19人の選手を招き「日蘭親善少年サッカー交流大会」が開催された。交流と費用の問題はいつも重い課題だが、それを乗り越えて平成12年、山田町・ザイスト市友好都市締結。12月には世界屈指の音楽の殿堂コンセルトヘボウの「ジャパンナイト音楽会」に山田中総勢53人出演、大喝采(かっさい)を受ける。

  本当に感動歓喜に沸き立つ一巻。山田に育まれた師弟の絆に打たれる。今まで私には無縁の地だったオランダもぐっと身近に思えてきた。大事な式典を音楽で祝うすばらしさ、この日の祝賀会には木村先生の指揮によるエルダー伝統のメンネルコールの歌声が深くしみわたった。
(八幡平市、歌人)


本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします