盛岡タイムス Web News 2013年  12月  24日 (火)

       

■  〈イタリアンチロルの昼下がり〉190 及川彩子 チネマ・ルックス


     
   
     

 クリスマスシーズンに入り、ここ北イタリアのアルプス高原の町アジアゴも、雪に覆われ、ウインタースポーツを楽しむ人たちで町の人口は膨れ上がっています。

  市庁舎前のクリスマスツリーも、中心街のイルミネーションも派手さはありませんが、通りはいつも観光客でいっぱい。そこで、市が10年以上も前から、市民に「冬の心温まる演出を」と提唱したのが「映画(チネマ)週間」。以来、この時期の恒例行事になったのです。

  パソコンやDVDの普及で、映画館が遠のく昨今ですが、アジアゴの街の中心にある映画館「チネマ・ルックス」は、昔ながらの山小屋風(写真)。冬のシーズンは、若者や老人向けに、10回千円という映画パスを販売している他、年齢層に合わせたプログラムを組み、また館自体も、さまざまな催しにも開放するなど、チネマへの集客を図っているのです。

  60年代に始まった本格的なイタリア映画産業は、西部劇をイタリア式笑いで再生したマカロニウエスタン、ソフィア・ローレン主演の名作「ひまわり」など、哀愁漂う作品で世界を風靡(ふうび)しました。

  その後、ハリウッドの波に押されますが、近年、北野武監督の「花火」が脚光を浴びたベネチア映画祭などで復活したのです。

  さらに、日本アニメで関心が高まり、宮崎駿監督のアカデミー賞作「千と千尋の神隠し」がイタリア名「魔法の町」で大ヒット。中学の教科書にも紹介されています。

  アンデルセン童話「人魚姫」を題材にした宮崎アニメ「崖の上のポニョ」が上映された際には、アジアゴの高校に通う長女のクラスでも大評判だったとか。

  今では、映画の背景に見え隠れする日本文化に興味を持つ若者も少なくないと聞きます。街の映画館が、若者たちの未知らぬ世界への扉になっているのです。


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