盛岡タイムス Web News 2013年  12月  31日 (火)

       

■  〈詩人のポスト〉 北の摂理 吉野重雄


 

石巻の
追波(おっぱ)湾から二百キロ
この秋も
諸葛川に鮭が帰って来た

最新鋭のカメラを構えて
盛んにシャッターを切るのは
この辺りでは見かけぬ若者
ウォーキングの夫婦が
脇目も振らずに通り過ぎて行く

メスは川底の砂に
産卵のための穴を掘り
オスは
他のオスが近づくのを防ぎ
放卵に放精が済めば
どちらも
力尽きて息絶える

産み落とされた卵は
見守るものもないまま
岩手颪(おろし)が吹き荒ぶ
凍てついた川の中で日を送り
無事に孵化できたものだけが
春には海へ下って行ける

一つだけ教えてやろう
諸葛川もこの辺りは
二十六年一月一日から市になる
だからお前たちは
滝沢村ではなく市で生まれた
第一号の鮭になるのだ

競い合って川を下り
アリューシャンからベーリングまで
力いっぱい泳いで行け
その日が来るのを待っているよ
        (摂理=自然界の法則)




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