盛岡タイムス Web News 2014年  1月  7日 (火)

       

■  〈詩人のポスト〉「風の悪戯」北里志郎


  
彼岸花が咲いていた
公園通りのベンチに坐って
交差点を行き惑う季節の風を見ていた

予報に逆らった灼(や)けつくような太陽も
呪文のような風に押されて翳(かげ)りはじめ
バスから吐き出された
戦争を知らない黒づくめの男たちが
無言で歩調を合わせ
数珠つなぎになって行く
どこへ行こうというのか
まるで案山子の行列ではないか

カッカッと軍靴の足音が聞こえてくる
襷(たすき)がけの女たちや小学生たちが小旗を振って
バンザイ 万歳
さっきの黒づくめの男たちも
軍靴の音に歩調を合わせて
延々と流れて行く
ああ、なんという野辺の葬列ではないか
穏やかな風景を裂いて
どこからかきな臭い風が
吹いてきたような気がした

白昼夢であったのか
街路樹の栃の木から
二つ三つ、実がぽとりと足元に落ちた
まどろみの時間の中で
呆然として墜落していく太陽を追い
戸惑った風の街角で
わが祖国の明日(あした)を何と見ればいいのか

     平成25年10月「学徒出陣の日」

 


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