盛岡タイムス Web News 2014年  2月  7日 (金)

       

■  〈潮風宅配便〉186 草野悟 島越駅と共に30年・早野さん


     
   
     

 田野畑村の応急仮設住宅で、お話を伺ってきました。三陸鉄道島越駅は、田野畑駅と小本駅の中間にあります。強じんなコンクリート造りの高架橋が12b上のホームを支えていました。駅舎は宮沢賢治の童話から名付けた「カルボナード島越駅」と言い、メルヘンチックで青い帽子型の屋根が開業当時から人気でした。

  早野さんは三鉄開業時から委託駅の駅長さんとして、切符の販売、土産物の販売や観光船の案内など、大好きな従業員の仲間と一緒に過ごしてきました。開業から27年、巨大な津波が島越地区はじめ近隣地域を襲いました。村の避難指示が有線放送で流れ、駅舎の戸締まり、施錠をして自宅へ退避しました。

  家に帰り5分ほどたったころ、不安の中、自宅前に出て海を見ていると、「巨大な熊が立ち上がったような黒い波」が襲ってきました。裏山の杉林を必死で逃げました。津波は足元まで来ました。集落は、ほとんど破壊されてしまいした。どうにか逃げ切った早野さんは「夢だ、夢だ、きっと夢だ」とつぶやき、寒波に震え、国道45号まで涙を流し上っていきました。

  親戚の家に身を寄せ、それからひと月。人生そのものであった島越駅を見に行きました。勇気を振り絞り、目を開きました。そこには頑丈な高架橋も駅舎も全て破壊された、無残な姿だけが飛び込んできました。泣くに泣けない悲惨な状況に「これで私の仕事は全て終わった」と覚悟をしました。それでも、いくばくかの希望を抱いていました。三鉄はきっと復活する、必ず私たち住民のために立ち上がる、と。三鉄復旧の朗報が入ってきたのは、それから半年後。うれしさに全身が震えました。

  その三鉄がまもなく全線開通します。最大の難工事だった島越地区。以前の高架橋から、より頑丈な築堤線路に生まれ変わりました。早野さんは指折り数えて再開通を待っています。何よりも愛した三陸鉄道。3年の空白がありましたが、三陸鉄道も開業30年目で全線復旧、元通りとなります。4月6日、再運行開始です。
(岩手県中核観光コーディネーター)


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