盛岡タイムス Web News 2014年  2月  19日 (水)

       

■  〈日々つれづれ〉210 三浦勲夫 ソチ冬季五輪


 オリンピックで金メダル有望と期待される選手が不振で、あまり注目されなかった選手がメダルを獲得。このような現象がよく起きる。女子スキー・ジャンプの高梨沙羅さん(17)は今季のワールドカップで13戦10勝と、国民の誰もがその名を記憶するほどの有名選手だ。その彼女がソチでは4位に終わりメダルに手が届かなかった。年齢的にまだ若いので次回、その次とオリンピックにはまた出場して、メダルを獲得する機会はある。

  「長野五輪を上回るメダル獲得数を」というふれこみだったので、国民はまず沙羅さんに期待した。期待かなわず、今後ソチでの日本勢はどうなる?と気持ちが暗くなりかけた。その直後に銀メダル2個、銅メダル1個獲得の朗報が入り、ふたたびテレビ観戦に熱が入った人たちも多い。そして金メダル! フィギュア個人戦の羽生選手(19)だ。そればかりか、ジャンプ・ラージヒルで銀メダルの葛西選手は41歳だ。ハーフ・パイプの平野、平岡、ノーマルヒル複合の渡部(暁)選手は、失礼ながら自分は今回初めて名前を知った。オリンピックも終盤戦、これからどんなドラマが展開するだろうか。

  「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」。これは元東北楽天ゴールデンイーグルス監督の野村克也氏の言葉かと思ったら、江戸時代の剣術名人松浦清山(1760│1841)なる人の言葉だった。「負けたときには負ける原因がある。勝ったときでも負ける要因が含まれていることがある。負けの要因をつきとめて常にそれを克服するよう努めなければならない」ということになる。まことに勝負の道は厳しい。

  科学者の実験の道でも失敗、挫折の連続にめげず実験を重ねて、最後の成功をつかむまでの執念が大切であることを知らされたのがスタップ細胞を作るのに成功した小保方晴子氏の例である。スタップ(STAP)とは「刺激惹起性多機能性獲得」の英語の頭文字であり、その性質を持つ細胞がスタップ細胞である。動物細胞に外部から強い刺激を与えても新たな若い細胞を作ることはできない、というのが何世紀も続いた学会の常識であった。その常識を破る実験に小保方氏は挑戦し、成功した。2014年1月に英国の科学誌「ネイチャー」はその論文を掲載したが、かつては同趣旨の同氏の論文掲載を拒否した。その理由が「長年の生物細胞学の通説を愚弄(ぐろう)するものである」ということだった。実験の失敗や論文掲載拒否。それにもめげず立証実験を重ねて論文掲載の運びとなった。日の目を見るまでには5年もの大変な苦難の道があったという。

  スポーツも科学と連動する。スタップ細胞について書いたら、単語の響きからスラップ・スケート(あるいはクラップ・スケート)を連想した。五輪では長野大会から登場した新型スピード・スケートである。従来はブレードを靴のつま先とかかと部分で固定していたが、スラップ式はブレードをつま先部分で固定し、かつヒンジで開閉し、かかと部分はバネ仕掛けで靴についたり離れたりする。ブレードの氷面接触距離が長くなりスピードが出た。足首も疲れない。オランダで開発された。スポーツ界でも理論的な新方式が歴史を彩っている。走り高跳びの背面とび、スキー・ジャンプのV字飛行、水泳のとんぼ返りターンなど今では常識だが、当初は大いに驚いたものだった。
   (岩手大学名誉教授)


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