盛岡タイムス Web News 2014年  3月  19日 (水)

       

■  〈口ずさむとき〉376 伊藤幸子 「大相撲春場所」


 賜杯受くる若さうるわし国技館ちかごろわれは涙もろくて
                                  森佐知子
                             「角川現代短歌集成」より

 「春場所が開催される大阪府立体育館は、難波駅のすぐ近くです。いわゆるミナミと呼ばれるところで、安くておいしい店が軒を連ねています。本場所の仕事が終わって、18時すぎに体育館を後にした私は、1軒のお鮨(すし)屋さんを訪ねます…」

  大相撲春場所が始まった。私はことし1月12日発刊の「大相撲 行司さんのちょっといい話」を片手に初日からテレビ観戦をしている。著者は三十六代木村庄之助さん。「行司生活半世紀、土俵の舞台裏を初公開!」と銘打って、図解も豊富で実に楽しくてわかりやすい。

  今回は国会中継のため、幕内力士土俵入りが終わってからのテレビ中継が多く、私のひそかな楽しみの某力士の「野火止クリニック」の化粧まわしは別の物と替えられたようでちょっとがっかり。15日間にぜひまた締めてほしいと願っている。

  力士は「心技体」が大切といわれるが、行司さんには一に勘、二に敏速、三に気力とのこと。また「同体だなあ」と迷う場合は、技をかけた方の力士に軍配をあげ、「掛け手に六分の利あり」との見方という。観客とすれば「同体、取り直し、もう一番!」と喜ぶのだが、「物言い」はいやだし、行司泣かせのお相撲さんには苦労させられるという。「お客さんが見ていてつまらない相撲ほど、行司は楽」との冗談に、ちらと本音もうかがえる。

  昭和39年1月、東京井筒部屋に入門。60年1月十両格行司、装束は正絹に足袋を着用。平成23年九州場所で、行司の最高峰である立行司、木村庄之助に昇進。烏帽子(えぼし)、軍配、飾り房、短刀、胸には菊綴(きくとじ)、袖口はくくり紐、白足袋、草履(ぞうり)と格調高い絵姿である。

  また行司さんの仕事のひとつの相撲字を書く作業にも興味を引かれる。作者は十両格行司に昇格と同時に番付の「書き手」助手を命じられた。畳1畳くらいのケント紙に1千名近くの名を書くとのこと。守秘義務、筆にかける集中力やいかばかりかと察せられる。

  25年夏場所千秋楽、庄之助定年結びの一番は白鵬、日馬富士の対戦だった。万全の体勢から日馬富士を寄り切って25回目の優勝を飾った白鵬。1年前の土俵である。

  さて今場所、5日目の番付(13日)は初日から横綱大関戦で4敗の前頭遠藤が大関稀勢の里に挑んだ一番。まっ向勝負で初白星を手にした若武者に、あすからの取り組みが楽しみだ。
(八幡平市、歌人)



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