盛岡タイムス Web News 2014年  3月  30日 (日)

       

■  〈ジジからの絵手紙〉59 菅森幸一 先生床屋

     
   
     

 不自由な戦後の暮らしの中で、当時の学校の先生方は今では考えられないようなサービスをわれわれにしてくれていた。

  その中の一つが床屋である。男子は全員が丸刈りの時代だから、特に髪が伸びている男子が集められ校庭の一部が床屋になるのだ。ところがこの床屋なるもの生易しいものじゃない。まず床屋になる先生の散髪技術が恐ろしく下手な上に、学校備え付けのバリカンが一部さび付いて、さっぱり切れないときている。お客に指名された生徒こそ悲劇の主人公だ。

  雪が解けてほんのり暖まった春の日だまりの中で、古いカーテンを首に巻いて座って散髪してもらう図なんて絵になる風景だが、順番を待っている生徒は戦々恐々だ。バリカンは五厘(りん)刈りといって一番短く刈るタイプだが、何しろ切れないし腕は悪いし、バリカンに挟まった毛が無造作に引き抜かれるたびに悲鳴が上がる。

  七転八倒する生徒を叱り付けながら当の先生は鼻歌を歌いながら呑気(のんき)なものさ。その日お客さんに指名されなかった者にとっては最高の見世物で、見事な「虎刈り」の出来上がる過程を腹を抱えながら見物したもんだよ。


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