盛岡タイムス Web News 2014年  5月  6日 (火)

       

■ 「ラジオ事件」映画化 「レイルウェイ 運命の旅」今夏に公開 駒井修さん(盛岡市)の父が関与 連合軍捕虜収容所テーマ


     
   「戦メリ」のサウンドトラックを見ながら語るパルバースさん(4月、盛岡市内で)  
   「戦メリ」のサウンドトラックを見ながら語るパルバースさん(4月、盛岡市内で)
 

 盛岡市上太田の駒井修さん(76)の父による、太平洋戦争中の連合軍捕虜収容所事件に材を取った映画「レイルウェイ 運命の旅路」がこの夏、公開される。英・豪作品で、駒井さんの父がタイで連合軍捕虜を処断した際の当事者である、元英軍将校の故エリック・ロマックスさんの回想が原作。ロマックスさんら英軍捕虜は、秘匿(ひとく)したラジオで連合国の放送を傍受していたため、修さんの父、駒井光男陸軍大尉が処断した。事件は1983年の日英作品「戦場のメリークリスマス」にも、エピソードとして折り込まれている。日英間の戦争責任を象徴する出来事として、駒井さんは改めて父の死を重く受け止める。「レイルウェイ」の公開を機に、映像を通して両国の和解が深まるよう願っている。

  「ラジオ事件」は駒井大尉が幹部だったタイのカンチャナブリ捕虜収容所で起こった。諜報活動に当たる放送傍受に対して、ロマックスさんら英軍将校らが連座し、2人が暴行を受けて死亡。駒井大尉は戦後、BC級戦犯として告発され、刑死した。「戦犯の子」となった駒井さんは英国を、ロマックスさんは戦勝国の側から日本を憎み、2007年に対面して和解するまで、長い歳月を費やした。

  「レイルウェイ」は、ロマックスさんの回想記をもとに豪州のジョナサン・テプリツキー監督のもと、ニコール・キッドマンや真田広之が出演。盛岡市では7月5日から盛岡フォーラムで上映する。配給のKADOKAWAの角川書店ブランドカンパニーの田中己珠恵さんは「シンガポールで英軍が降伏し、日本軍の捕虜として鉄道建設にかり出される。日本の通訳との間につらい記憶がある。ロマックスさんは生きて本国に帰り、夫人のパトリシアさんとの出会い、通訳との再会などを通じ、心の傷を癒やす旅路を描いている」と作品を紹介する。

  駒井さんはデプリツキー監督とともに、東京都内で3月末に行われた試写会に臨み、ロマックスさんとの関わりを通して、歴史的背景に触れた。駒井さんは「映画は作品なので、父がそのまま登場するわけではない。日本軍のむごさを見るのがつらいという人もいるだろうが、ロマックスさんの側から見れば当然のことで、英国7分、日本3分ほどの視点で描いている。原作には駒井大尉にやられたとある」と話し、事件の意味を直視した。

     
   映画「レイルウェイ」のシーン(c 2013 Railway Man Pty Ltd, Railway Man Limited, Screen Queensland Pty Limited, Screen NSW and Screen Australia)  
   映画「レイルウェイ」のシーン(c 2013 Railway Man Pty Ltd, Railway Man Limited, Screen Queensland Pty Limited, Screen NSW and Screen Australia)
 


  ラジオ事件はたけしが主演し、故・大島渚が監督した「戦場のメリークリスマス」のクライマックスを構成する。駒井さんは作品を父の映画と信じ、助監督を務めた米国出身のロジャー・パルバースさんと親交がある。「レイルウェイ」の公開を受け、改めて両作を見つめ直している。「映画としては『戦メリ』の方が公平と感じる。日本の将校を演じた坂本龍一に手紙を書いたことがある」と比較する。

  宮沢賢治など日本文学研究者として知られるパルバースさんは、「戦メリ」と駒井大尉の関係について、「脚本はポール・マイヤーズバーグが書き、自分はタッチしていない。ラジオ事件を彼は知っていたかもしれないが、分からない」と話す。「ラジオ事件のようなことは、カンチャナブリ収容所以外にもあったかもしれない」と、戦争責任をめぐる象徴的な故事と受け止める。現場では出演のデビット・ボウイら俳優と監督の調整に苦労したという。

  欧米の戦争映画について「米国や英国の映画は勧善懲悪なので、自分が正しかったと国民に感じさせるため作っているものが多い。相手の気持ちを理解する、日本人も残酷だったが大変だった、こちらも残酷だったという映画もあるが、マイナーだ。だから米国の戦争映画はスピルバーグなどの作品も、私は好きではない。百パーセントの善か悪かだ。たまに悪い米国人や気の毒な日本人を登場させることもあるが。大島監督は私に、敵の考えや動機を思い、理解しようとしなければ戦争映画は作れないと言った。だから『戦メリ』は反戦映画に入る。戦争は地獄だという作品にすれば、反戦映画になるわけではない」と論評し、駒井さんとともに戦争と平和の問題に考えをめぐらしている。


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