盛岡タイムス Web News 2014年  5月  21日 (水)

       

■  〈口ずさむとき〉384 伊藤幸子 「緑の海・モンゴル」


 モンゴルを緑の海と喩 (たと)へたり国を問はれて語る日馬富士
                                        村上笑美子

 大相撲夏場所、国技館に華やかな力士幟(のぼり)が揺れている。5月11日、初日には午前8時20分に満員札止めになったという。よびだしさんたちの着物も藤色の夏らしい装い、びっしり入った観客席も白っぽい夏服が目立ち、着物姿の女性客も多い。「和装デー」も設けたりしているようだが、大きい力士の浴衣の柄や行司さんの装束も目を楽しませてくれる。

  今場所から横綱が3人だ。白鵬28歳、日馬富士29歳、鶴竜28歳、いずれもモンゴル出身。掲出歌は所属する短歌会の合評コーナーより。昭和12年宮城県生まれの村上さんの歌に、昭和36年生まれの山口県の鈴木千登世さんが評を書かれた。「海のないモンゴルから海に囲まれた日本へ。異文化の中で忍耐の日を送った日馬富士の、その人となりを伝えている」とある。作者自釈の弁でも、「モンゴルってどういう国ですか」と訊(き)かれて「緑の海のようです」と応えた横綱に「豊かな想像をかきたてる唯ひとことの凝縮された言葉に感動を覚えた」と、「緑の海」のキーワードが光る。

  抽出及び総評の久保田智栄子さんは広島の昭和42年生まれ。相撲界には平成生まれの関取も続々活躍しているが、短歌界の高年齢化は進むばかり。久保田評「日馬富士は入門時、四股名(しこな)を『安馬』といった。祖国を『緑の海』に喩えた発言を考えると、壮大なモンゴルの草原を疾走する一頭の駿馬(しゅんめ)が目に浮かぶ」と相撲界の重責を担って闘う姿をたたえている。期せずして女流三氏の相撲談義、強くてきっぷのいい男前のお相撲さんは常に土俵の花だ。

  さて、今や人気絶頂の前頭四枚目の遠藤への声援がすごい。昨年3月の春場所初土俵、異例のスピード出世にざんばら髪だったが、今場所から小さなまげを結って登場。初日は旭天鵬に正攻法の寄り切りで白星。出身地の隣富山県の松本京子さんの作品に「空と海にボラ待ち櫓(やぐら)の描かるる化粧まはしの凜々しき遠藤」があった。遠藤関の化粧まわしの意匠がよくわからないうちに画面が変わってしまうが、北陸の海を想像しながら眺めている。

  4日目、新横綱鶴竜と対戦。14本の懸賞が回り大歓声の中、豪快に寄り倒し初金星。この前に大関琴奨菊を倒した安美錦がインタビューで「いい相撲でしたね」と言われると「遠藤ね」と応じて笑いに包まれていた。三横綱もベテランも新鋭も、「美しき勝負師たち」の夏場所はいよいよ折り返し点を過ぎた。
(八幡平市、歌人)

 


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