盛岡タイムス Web News 2014年  6月  3日 (火)

       

■  〈イタリアンチロルの昼下がり〉201 及川彩子 トラム・ルネサンス


     
   
     

 最近、イタリアの新聞や雑誌でよく目にする言葉に「トラム・ルネサンス」があります。トラムとは、路面電車の総称です。

  ここ数年、イタリアの街では、節電や渋滞緩和政策として、十字路の信号に代わり、ロータリーが次々に設置されています。季節の花壇や街の特徴を醸したデザインなどで外観も美しく、市民に好評を得る一方、昔ながらのトラムが、車に依存しすぎない社会の切り札として見直され始めたのです。

  1800年代にドイツで生まれ、馬車に代わり、古きよきヨーロッパの古都を彩ってきたトラム。イタリアで初めてトラムが導入されたのは、1800年代後半のミラノ。以来、全盛期には、70余りもの都市で活躍しましたが、第2次世界大戦後は「交通の邪魔」と消滅。ローマ、ナポリ、トリノそしてミラノなどの7都市だけが生き残ったのです。

  それが、トラム・ルネサンス活動により、2000年を皮切りに、シチリアやサルディーニャの島々、イタリア本土側のベネチア地区、そして一年中観光客の絶えないフィレンツェでは、50年ぶりにトラムが復活。ここアジアゴ近郊の学生街パドバでは、安全性を優先したゴムタイヤ式トラムがお目見えしたのです。

  時折訪ねるミラノでは、フィアット社開発のバリアフリーを兼ね備えた、しゃれた低床式最新トラム〔写真〕が話題を呼んでいますが、昔と変わらないだいだい色の旧式ボックス型に乗ると、沿線の風景や生活の様子などが、いつもと違って感じられるから不思議。ガタガタとぎこちない揺れさえ心地よく思うのは、私だけではないかもしれません。

  ミラノ郊外、昔の面影を残すナバリオの運河沿いの町で乗客を待つだいだい色のトラム。左右にまとわりつく車たちを、チリンチリンと警笛を鳴らして振り払い、わが物顔で走る路面電車は、いつの日も古都の主役なのです。


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