盛岡タイムス Web News 2014年  6月  25日 (水)

       

■  劇画に語る危機の時代 ゴルゴの心は「地球有限」さいとう・たかを氏インタビュー


     
  インタビューに答えるさいとう氏  
 
インタビューに答えるさいとう氏
 

 劇画家のさいとう・たかを氏(77)にインタビューした。代表作の「ゴルゴ13」は1969年から連載が続いており、「無用ノ介」など多くの作品が国民的に親しまれている。テロや戦争、天災などにペンを走らせてきた巨匠に、震災や凶悪犯罪など、現代の危機について聞いた。ゆかりのある岩手に深い愛着を示しながら、混迷する世界へのシャープな視点を示した。 (聞き手・鎌田大介編集局長)

  ―岩手に対するイメージは。

  さいとう 大阪の堺に育った。隣の奥さんがとても感じの良い、柔らかな耳当たりの言葉を話した。子どもなので「おばさんはどこの出ですか」と聞くこともできなかった。東京に来て同じ言葉を聞き、どこの出身かと聞いたら、こちらの出身だと言う。こちらの人の言葉が、ずっとわたしの憧れだった。わたしは東北ファン。

  大阪弁は決して耳当たりの良い言葉ではない。堺に行くと同級生が、「なぜ岩手、東北にいるのか。こっちにいたら」と言うが、わたしは帰りたくない。子どものころ育ったところは、堺でも河内に近く、言葉がきつい。河内弁では親をつかまえてお前と言う。そういう言葉が嫌いで、向こうに戻るつもりは全然ない。

  ―河内に縁のある作家の今東光も、岩手県で中尊寺の貫主になった。平泉からはカエルの戯画が出土し、岩手県は漫画立県を掲げている。

  さいとう やはり憧れがあったのだろう。わたしはそれが強かった。東北のようなムードがあったら、温かいし慣れているので、堺に住みたいと思ったかもしれないが。ただ東京も嫌い。何とか東京を脱出したいと思いながら50年住んだ。

  3人で出てきて、友達はうれしそうにしていたが、わたしは島流しに遭うような気持ちだった。何とか早く脱出したいと思いながら、50年以上住んだ。劇画については、岩手は東京よりよほど理解力と関心のある人が多い。

  ―歴史ものでは戊辰戦争の宮古湾海戦、永田町ものでは鈴木善幸や小沢一郎を描き、「ゴルゴ13」は岩手県出身の国際商社マンが活躍する作品がある。ゴルゴは事実に取材したものではないというが、20年、30年前の作品を読んでも、現在の国際問題を予見していたような作品があるのではないか。

  さいとう わたしは政治に興味があった。50年前に、社会主義はあと50年持たないと言ったことがある。仕事仲間は、マルクスを読めば世界が共産主義になると言う。皆で平等に良くなろうというのは、これから国を何とかしていこうというときは理想的な主義主張だ。しかし国が安定したら、絶対それではまとまらないと言った。皆が平等に行こうとしても、政治家は権力を持つしかなく、独裁者を生む。独裁者の国はそんなに長く持たない。共産主義、社会主義も50年持たないと言ったら、その通りになった。

  そういうことを考えるのが好きで、政治に興味があり、世界を見ていた。みんなは世界情勢はまったく別世界のことのような見方をしているが。昔、田中角栄が「消費経済」と騒ぎ出したときは、大変なことを言い出したと思った。外国から見て何の資源も持たない国、隣近所にみそしょうゆを貸してくれと言う家が、気が付いたらすき焼きやステーキと言い出したら、周りは黙っていない。世界が許さないのに、消費経済、消費経済と大騒ぎしていた。

  世界情勢は隣近所で起きていることの延長線上。世界政治と言っても、難しいことはない。だからわたしは新聞では1面が一番好きだった。3面記事に細かいことまで書いてあっても、あまり興味がなかった。世界情勢なら誰それが、なぜこんな時期にこういうところに行くのかという記事が載っているので、そこから波及してドラマを考えると面白い。


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