盛岡タイムス Web News 2014年  6月  28日 (土)

       

■ 〈体感思観〉 ひそかな恩師を訪ねて 編集局 鎌田大介


 花巻市の別荘に、さいとう・たかを氏を訪ねた。巨匠を前に緊張した。

  私がさいとう作品を最も熱心に読んだのは小学4年のころ。当時ヒットしていた小松左京原作「日本沈没」の劇画本に、学校から帰ると毎日かぶりついた。

  あまりの読み過ぎに、コマ運びと吹き出しのせりふや擬音まで全巻暗記してしまった。「日本列島に未曾有の地殻変動が起こり…」「政府は戦後初の非常事態宣言を発令し…」うんぬん。背伸びして、意味も分からず呪文のように唱えているだけだったが、これで難しい漢字が相当詰め込まれた。さいとう氏は、私の幼い脳に鋭くチョークを引いた、ひそかな恩師なのだ。

  さすがに「ゴルゴ13」は全巻読んでいない。劇画界最長のタイトルを持つ連載をひもとくと、岩手を背景にした作品が二つあった。「穀物戦争 蟷螂(とうろう)の斧(おの)」(82年)、「G資金異聞 潮流激る南沙」(94年)。どちらも本県出身の藤堂なる商社マンが登場し、例によって国際謀略ギラギラの筋書き。早池峰山とおぼしき山道で、藤堂とゴルゴが密談するシーンもある。

  読んでみて驚いたのは、日米貿易の暗闘を描いた「穀物戦争」は最近のTPP論争を、南シナ海の海洋紛争を背景にした「G資金」は、現在の中国との領土問題を先取りしていたことである。恐るべき眼力に、その秘密を尋ねると、「世界情勢は隣近所で起きていることの延長線上」と、けむに巻かれてしまった。

  ドラえもんと並び、いまや「国民的スナイパー」として親しまれるゴルゴ。連載開始の69年は、盛岡タイムス創刊の年でもある。ともに45周年、地域から世界への視点を忘れずに、ターゲットを探したい。
 

 


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