盛岡タイムス Web News 2014年  7月  3日 (木)

       

■  〈風の筆〉57 沢村澄子 「滝川クリスタルキングコング」


 毎朝というわけではない。この1年ほどの間に6、7回。起きがけ洗面所で鏡を見るや、自分の寝ぼけた顔を「滝川クリスタルに似てる!」と思ったのだ。

  どう見てもどう考えても似ているはずがないのに「似てる」と思われるから不思議で、それもしかし1回ではないのだ。それでついに友達に「似てるか」と聞いてみたら「絶対似てない!だいたい、滝川クリスタルでなくて滝川クリステルだからね!」と怒る。

  「一体どこが似てるっていうの?」「それが分からないから聞いてみたんじゃない」「どこも似てないと思うよ」「じゃあ、顔のツクリでなくて内面からくるものかしら…。例えば知性とかサ」「すみこちゃんフランス語できる?」「大阪弁ならできる」「ん〜難しいね〜。どこをどうして似てるって言うのかね〜」「何一つ似てないの?」「えええーッ。ん〜。タレ目のとこかな…」「滝川クリスタルってタレ目なの?」「クリステルだってば!すみこちゃん、滝川クリステルの顔見たことあるの?」「ある!でも、テレビないからな〜。お・も・て・な・し、の人でしょう?」「その認識は間違ってないんだね。でも、似てないよ」

  友人は断固似てないと言うのだった。そうね。だから、の不思議は、なのに数回「似てる」と認識したのはなぜか、ということなのだ。単なる寝ボケ、カンチガイの話なんだろうか…。

  滝川クリステル、滝川クリスタル、滝川クリスタルキング、滝川クリスタルキングコング…。ある日、こんな呪文みたいな言葉をぶつぶつ繰り返しながら街を歩いていたら、彼女のポスターがあった。

  その前に立ち止まってマジマジと観察してみると、似てない!わたしの顔とはまるでまるで全然似てない!むこうは色は白いし、ほくろはないし、鼻はすっとして唇ぽってりだし、だいたい面長だ。(こちらは鼻に針さしてコンパスで円を描いてる)。彼女、美人だ。

  ん〜。困ったな…。やはり、繰り返すが、ではなぜ「似てる」と認識したか、にまだひっかかっている。

  周りに画家が多く、よく似顔絵を描いてくれる。そのつど思うことは、その人がわたしをどう捉えたか、どう認識しているか、ということで、出来上がった絵同士それぞれは似ていない。わたしのどこか、ある一部が写され、画家たちの認識の差が記録されている。中には、どこも似ていないと思われるものもあるのだが、ある時、知らないうちに撮られたスナップ写真などにその似顔絵に似た自分を見つけたりして、その作家の視線を後追いで認めることに。「自分が認識していない自分」がたくさんある。

  だから、わたしは自分の認識の全てをいつも疑っている。滝川クリステルと滝川クリスタルキングコングだって実は似ているのかもしれないと、疑っている。

  今、電話がかかってきた。「すみこちゃ〜ん。分かったよ〜。すみこちゃんと滝川クリステルは髪型が似てるんだ!そっくりだよ〜」。
      (盛岡市、書家)


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