盛岡タイムス Web News 2014年  7月  14日 (月)

       

■  〈幸遊記〉183 照井顕 加地保夫の大邸宅

 

  今、僕はこの原稿を栃木県那須町の山奥にある木造の大邸宅カフェ「フランクリンズ」のテーブルに座って書き出している。店主は30年来の友・加地保夫さん(65)の次女・彩登子さん(30)と、その夫・吉則さん(48)のご夫妻。

  今夜から始まる、20年ぶりの縄文の歌旅・三上寛ツアーの初日の会場である。三上は今リハーサルを開始した、例のブルースである。今年2014年4月26日、このフランクリンズ(小地主の意・米シアトルには同名の大学もある)。山中とはいえ2600坪の広大な敷地には大きな池やブルーベリー畑、子どもが楽しめるブランコまである。とにかく緑・緑・緑の大自然の中で楽しむ音楽と、保夫さんの奥さん・悦子調理師(65)の手作り料理でもてなす気持のいい店なのだ。

  加地さんと出会ったのは、1981年、大船渡のマイヤ本店で開かれた、加地保夫・空間の表現展。会場でお会いした時、意気投合し、その場で、僕に作品を1点くれるという。僕も、本当にもらえるのなら、どれでもと言えばいいものを、これ!と指差して、もらった作品は、その作品展の主軸をなす“線一風化”。この作品は今、開運橋ジョニーの入り口にある。

  あとで知ったことだが、実はその作品、第20回ホアンミロ国際ドローイング展に出品予定の作品だった。それを何も言わず、僕に渡してくれた彼。以来、僕らはジャンルは違えど、良き友、よきライバルとして、陸前高田の文化をそれぞれ別角度からけん引したものだった。彼の奥さんも面白い絵を描く人。

  保夫さんは愛媛県伊予三島市(現・四国中央市)に1949年に生まれ、78年渡西し、バルセロナの国立応用美術学校に学び、ダニエル・アルジェモン教室にて石版画(リトグラフ)をも修得し、81年帰国。その初の国内展が大船渡だったのだ。10年後の96年に県の優秀美術選奨受賞。

  風化、風の記憶、樹、地、波、窓、黒、などのシリーズ版画は、彼の独特の手法とあいまって、独自の境地を切り開いてきたのでした。奥さんの故郷・陸前高田を離れ心機一転、海から山の暮らしへとシフトを変えた彼の今、墨のドローイング(樹木)を版に起こす作業に気を入れている。
  (カフェジャズ開運橋のジョニー店主)


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