盛岡タイムス Web News 2014年  8月  13日 (水)

       

■  〈日々つれづれ〉234 三浦勲夫 探し物


 8月13日から16日までが旧盆である。墓参り、盆客の迎え、親類訪問、家族の帰省、舟っこ流し。夏の成人式、全国高等学校野球選手権大会。盆を中心に人は広範囲に移動し、さまざまな行事が催される。終戦記念日(15日)も盆中に巡ってくるが、戦争のない戦後69年間を喜び、将来にわたって不戦の誓いを固め、平和の維持に努めたい。

  今年もあれこれ盆を迎える準備をしたが、墓掃除のほかにも家の掃除をしながら私的なことで大事な探し物を続けた。探し物とは母親がかつて探していた「結婚写真」である。今年こそは見つけてあげたい。おととしから暇を見て探している。見つけて介護ホームにいる母に見せてあげたい。自分の記憶では一番古いアルバムに貼ってあった写真だ。

  両親のアルバムは重ねてある。20冊か。その他の写真も大小たくさんあって大きめの箱に入っている。問題の写真はどこにもない。捜索の消去法を重ねて場所は限られてきていた。最後に残された場所は、広い縁側にあとからこしらえたロフトみたいな押入れである。上下に仕切られている。下の扉が固くて開かない。これまで開かないと諦めてきたが、今年こそ、なんとか開けよう。

  戸と柱の隙間から白い止め具が見える。どういう仕掛けか分からないが、小さいドライバーで上下前後につついてみた。取っ手を引くと戸が少し動き出した。思い切って力を加えて手前に引くと開いた! 白い部分はプラスチック製で回転しながら浮き沈みする小さい回転筒である。詰め込まれた品々を慎重に外に出す。最後に黒い背を見せた書物みたいな物がある。取り出すと漆塗りの黒表紙の新品アルバムだった。「叙勲記念」とある。一応開いて中を確かめると、最初のページに問題の結婚写真があった!

  古いアルバムから剥がして、ここに移したのだ。父親が叙勲されたのは20年ほど前だ。記念のアルバムに写真を移して夫婦の歩みを振り返ろうとしたのだろう。これは、きょう中に母に見せなければ。その日は午前中もホームに行ったが、夕方の再訪となった。母はいつものように何も知らずに寝ていた。物音で目を覚まして「あら」と言う。「いい物がある。何だろうね」と、もったいをつけて包みからアルバムを出す。「これだよ。知らない?」「知らない。立派な物ねえ」「アルバムだよ。叙勲記念とある。ほら、ここに結婚写真があったよ」「あらあ、そうね。うれしい」と大きな声で喜んだ。

  誰がロフトにこれをしまったかは分からない。父か?母か? 父は13年前に他界した。母はこのアルバムを忘れていた。しかしどちらかがこれをロフトに大事に保管したのだ。徐々に他の物にうずもれたのだ。在宅中からその写真を探していた母は、諦め切れない思いだった。そして息子に捜索を託してホームに移った。息子は「あの古いアルバム」を懸命に探してきたのだが、それはいまだに姿を見せない。しかし結婚写真は新しいアルバムに移されていた。翌日は別の写真も持参して母に見せた。写真は記憶を引き出す道具となる。過去を思い出し、ニコニコ笑い、「ウン、知ってる。そうそう」と母は言う。息子は正直「あの古い写真は見つからないかもしれない」と諦めの気持ちも出かけていたが、今年は残された可能性に懸けた。盆前の大きな「殊勲賞」だった。

(岩手大学名誉教授)




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