盛岡タイムス Web News 2014年  8月  20日 (水)

       

■  〈花林舎流庭造り─よもやま話〉13 野田坂伸也 庭造りの才能


 この春、盛岡で庭の改造工事を頼まれました。大きい工事はもうできないので内容によってはお断りしよう、と考えながら伺いましたが、幸い3〜4日で済みそうな仕事でしたのでやらせていただきました。改造前のお庭(土の面になっているところ)は幅が3bもなく長さは10bくらい、そのほかに1b幅の狭い植栽地が7〜8b。居間の前にはインターロッキング(コンクリート製のれんがのようなもの)で舗装したテラスがあり、ここに大きな日よけの傘つきのテーブルと椅子が置いてあります。市の中心部にも近い区域ですからお庭が少々小さいのはやむを得ません。

     
  植物への愛情あふれる庭  
 
植物への愛情あふれる庭
 
  奥さまは植物が大好きでガーデニングに夢中なのですが、それまでは主に鉢植えで宿根草やバラを栽培しておられたのだそうです。しかし、水やりの手間が大変なのと「庭」と言うものを造ってみたいという思いが強くなり、鉢から抜いて地植えしたいのでその基盤を造ってほしい、というご希望でした。そこで、テラスの角を少し削り地植えできる区域を広げ、植栽区域の縁に縁取りの石を並べて土を15a足す工事をやりました。工事終了後の植栽は奥さまが全てご自分でおやりになるとのことでしたので、1週間ほどたってから行ってみると「うーん、これはいい」と思わず感嘆の言葉が出てしまった、すてきなお庭に変わっていました。特別凝った構成とかはなく、淡々と好きな植物を配置してあるだけなのですが、植物に対する愛情がにじみ出ていて、ここにはこのいとしい植物、あっちにはこのいとしい植物、という気持ちがありありと伝わってきます。どれも気に入って集められた植物で、それらの配置は鉢植えで何年も育てておられた間にほとんど構想ができておられたのだろうと推測しました。以前からあった背の高い赤いバラがアクセントとして、がぜん輝きを増しています。プロにはこういう庭を造るのは難しいのです。プロはどうしても採算を考えざるを得ませんので何年も時間をかけて検討することは特別な場合でないとできませんし、愛着のある植物を集めるということも長い期間が必要です。
     
  植栽地の縁取りの石と飛び石  
 
植栽地の縁取りの石と飛び石
 

  ガーデニングが盛んになってから素人の人でプロよりうまいと思う人に私は時々出会っています。日本には相当な数の庭造りの才能豊かな素人がいるに違いありません。定年退職後に暇つぶしに絵を描き始めたら素晴らしい絵ができるようになったというような人がいますが、庭造りも同じでずっと主婦業をしてきて庭造りなどやったこともなかった人がガーデニングに夢中になり素晴らしい庭を実現してしまった、と言う事例が数限りなくあると思います。ガーデニングのおかげで人生に生きがいを見いだしただけでなく、隠れていた自分の思いがけない才能まで発見したわけです。

  逆に、庭造りを仕事にしているけれども、あまりいい庭を造れない人もたくさんいます。庭造りは知識とセンスと技術に加えて愛情がなければ、いい庭はできません。庭造りには(素人であれプロであれ)その人の人間性、人間力が反映するということが近頃、分かってきました。

  庭は後世に残るものですから気を引き締めて取り組まなければならない、と改めて考えさせられた経験でした。



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