盛岡タイムス Web News 2014年  9月  5日 (金)

       

■  〈潮風宅配便〉215 沿岸の山奥に楽園あり


     
   
     

 三陸鉄道の北リアス線、宮古駅から3駅目、15分ほどで佐羽根駅に着きます。次の駅は田老駅です。三陸沿岸のイメージとはかけ離れ、まるで黒部渓谷の山の中のようです。右の建物の横を三鉄が走ります。中央の大きな2本の木の奥に「悠々亭」という食事処があり、その家の庭がこの風景です。普段は無人です。予約が入ると、店主の中澤さん夫婦が隣町の宮古市山口から林道を越えてやってきます。

  敷地の左右に小川が流れ、イワナやヤマメが生息しています。夜になるとホタルが飛び交います。美しい樹木は四季折々、色づきが変化し、何とも言えない桃源郷のようなのどかさを醸し出します。敷地の中に湧き水が数カ所。三つの池に流れ込みコイやハヤを放しているため、カワセミがよく飛来します。春先には熊が散歩に現れるようです。人生の楽園という番組がありますが、中澤さんご夫婦、まさに楽園暮らしなのです。春になると庭では自然にコゴミやシドケ、ゼンマイ、ウド、山ワサビ、などが出てきます。車で15分も山道を走ると田老の海に出ます。なんというぜいたくでしょうか。

  「悠々亭」は予約専門の料理店です。食材は全て自前。買ってくるものは何一つありません。名物の「熊汁」は臭みが全くなく、初めての人も「う・ま・い」と叫ぶほどです。三陸鉄道とともに生きてきた中澤さん。三鉄の応援者としていろいろな貢献をしてくれます。佐羽根駅の周辺の草刈りも、4日もかけてきれいにしてくれます。

  悠々亭の自慢の一つに「湧き水」があります。この湧き水で入れるお茶は、かすかな甘露風味があり、茶葉が奏でるメロディーが浮かんできます。ほんとです。この湧き水を鉄瓶で沸かして焼酎のお湯割り。「まろやか」とは、こういうことなんだ、と毎回同じように感心します。何もない田舎で、なんでもある食材。美しい心の村人たち。どこまでも澄んだ空気とおいしい水。いつかは、ここの住民になりたいと思う夏の日でした。
(岩手県中核観光コーディネーター)


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