盛岡タイムス Web News 2014年  9月  7日 (日)

       

■ 被災地で読み書かせ人材養成 沿岸へ良書との出合い運ぶ うれしのこども図書室 高田小では環境整備にも 大震災の年から支援活動継続

     
   
   「子どもたちにぜひ、経験してもらいたい本の世界がある」と語る、うれし野こども図書室の高橋美知子理事長
 


  盛岡市のNPO法人うれし野こども図書室(高橋美知子理事長)は陸前高田市、大船渡市など沿岸被災地で、子どもたちが良書に触れるための支援活動を続けている。昨年からは被災した陸前高田市立高田小学校の図書室の環境整備や、大人に絵本や読み聞かせの魅力を伝える講座も始めた。理事長の高橋さん(65)は「心の根っこを育て、立派な花や実をつける肥やしになるような本との出合いを届けたい」と語り、活動への思いを込める。

  うれし野こども図書室は、公益財団法人や民間企業の助成を受け、支援活動を続けている。2011年11月には、陸前高田市にトレーラーハウスを活用した「陸前高田こども図書館ちいさいおうち」を開設。専任司書を置き、被災地の親子が安心して本に親しめる空間を提供してきた。

  この秋には、大船渡市で、物語を子どもたちに語る「ストーリーテリング」の連続講座を実施。9月10日から同21日までは同市民文化会館を会場に、国際図書館連盟(IFLA)の協力による世界の絵本展「絵本で知る世界の国々」を開く。釜石市でも11月まで全5回の日程で絵本の読み聞かせ講座の開催が決まった。

  被災地での支援活動は、津波にのまれた陸前高田市立図書館や、地元の読み聞かせグループと、震災前から深く交流していたのがきっかけ。高橋さんは発災後、間もなく、読み聞かせグループの仲間の案内で避難所を訪問。手渡した本を胸に抱き、涙を浮かべる知人の姿を目にし「できる支援をしなければ」と心に誓った。

  当時は、誰もが生活の立て直しに精いっぱい。図書館のことなど考える余裕はない。それでも、子どもが本を手にし、ゆったりできる場を作りたいと奔走した。高橋さんが絵本や児童書から生きる力を得て、つらいことも乗り越えてきたと感じていたからだ。「ちいさいおうち」の利用者は8月27日までに延べ1万924人に達した。

  大震災から間もなく3年半。今年度限りの助成金もあり、支援活動は過渡期を迎えている。最終的には絵本や児童書に関心を持つ地元の人が力を付け、地域のニーズを捉えて活動するのが望ましい。支援の在り方も変えていく必要がある。絵本の読み聞かせやストーリーテリングの講座を通して「本当の意味で、良書を理解し紹介できる人材が育ってほしい」と願う。

  13年1月から始めた高田小学校の図書室の支援は3年間の予定。初めは、基本となる文学などの蔵書が少なかったため、全国からの寄贈本が保管されていた遠野市の文化センターで本を選び追加。本棚の配置の改善やデータ入力を進めた。テーマに沿った本の展示紹介や、昼休み時間の「ミニお話会」、来室した子どもたちのための個別の読み聞かせなどにも取り組んでいる。本に触れる子どもたちの姿にも変化が見え始めているという。

  「良い本は五感を刺激し、実際にその場にいなくても実体験したような深い体験ができる。ファンタジーも、どっぷり本の世界に入って空想を膨らませる貴重な機会を提供してくれる。子どもにとって、どちらも大事な経験」と高橋さん。「盛岡で経験できることが沿岸の被災地で経験できないということが、決してないよう力を尽くしたい」と語る。


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