盛岡タイムス Web News 2014年  9月  21日 (日)

       

■  安比高原ふるさと倶楽部(上) 馬で芝草原復元へ 中のまきばで実験調査 美しい牧歌風景後世に


     
  牧柵の中で草を食べる子馬の様子を見る種市幸雄さん(左)  
  牧柵の中で草を食べる子馬の様子を見る種市幸雄さん(左)
 

 かつて放牧が行われていた美しい芝草原を取り戻したい―。安比高原スキー場から約3`上部にある安比高原「中のまきば」で、地元の有志らで結成された安比高原ふるさと倶楽部(関善治郎会長、会員66人)が活動を続けている。モットーは「つなげよう美しい安比高原」。かつての牧歌的な景観を変えたササや低木を根気よく刈り、今年初めて馬により芝草原を復元する実験調査が行われた。今月3日には、八幡平市荒屋新町の種市幸雄さん(68)が世話をする馬5頭が放され、高原の秋風に吹かれて草をはむ光景が見られた。(藤澤則子)

  約3`下部にあり、例年の放牧地である安比高原牧野から馬を率いてきた種市さんは「6月に一度来ているので、草のある場所が分かっているようだ。春に生まれた子牛も随分を大きくなった」と目を細める。

  安比高原「中のまきば」は、かつて隣接の「奥のまきば」を含めて広大な牧草地を形成し、牛馬の放牧が盛んに行われていた。1960年代後半から放牧が減り始め、20年ほど前に放牧がなくなるとササなどの侵入で藪(やぶ)化、森林化が心配されてきた。

  「私たちが当たり前のように見てきた安比高原の風景は、人と馬がつくってきた風景」と話すのは、同倶楽部事務局の斎藤文明さん(55)。馬はレンゲツツジを食べないため、緑の草原に色鮮やかなレンゲツツジが咲く風景は放牧地ならでは。同市安代地区の農家の出身で、馬屋のある生活や放牧の光景を身近に感じてきた斎藤さんにとっても古里の原風景だ。

  中のまきばは現在、国有地となっているため放牧はできない。馬に草を食べてもらう芝草原復元実験として許可を得て実施している。春にボランティアらが4fを取り囲む牧柵を設置。6月に夏いっぱいの予定で初めて馬を放したが、日照不足などから馬が食べる草が育たず、20日で山を降りた経緯がある。

     
  安比高原スキーがある前森山、西森山を背景に中のまきばに向かう馬たち  
  安比高原スキーがある前森山、西森山を背景に中のまきばに向かう馬たち
 


  斎藤さんは「今回は、馬が草を食べるときの障害になっていたワラビを重点的に刈ってもらった。実際に放してみないと分からないことも多いので、馬の様子を見ながら実験研究を重ねたい」と話す。今回の実験は1カ月程度の予定だが、草の生育状況などによっては変更もあるという。

  「中のまきば」「奥のまきば」の環境保全については、2005年ごろから八幡平市と岩手北部森林管理署の働き掛けで勉強会などが開かれ、06年6月に次世代の子どもたちにつなげる学習の場として「あっぴ高原遊々の森」を設置。この間、地元のペンション経営者らボランティアが下刈り、焼却を続けてきた。12年に民間主体の「安比高原ふるさと倶楽部」を立ち上げ、民間主体の活動として再スタートした。

  少しずつ以前の風景を取り戻してきた芝草原の周りにはブナ二次林が広がり、県内外の人が散策を楽しんだり、市内の小学生が遠足に訪れたりしている。トイレを備えた休憩所「ブナの駅」もある。

  八幡平寺田から散策に来たという70代の夫婦は「この自然が気に入って年に数回は車で来る。ウメバチソウとリンドウを見に来たが、馬を見るのは本当に久しぶり」と、馬が高原を駆ける風景に見入っていた。

  斎藤さんは「安比高原の風景は馬と人の歴史そのもの。なくなってからでは遅いので、まずは地元の方をはじめ多くの方に関心を持ってもらいたい」と話していた。

 


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