盛岡タイムス Web News 2014年  9月  21日 (日)

       

■  玉山・外山御料牧場 知られざる地域の威光 馬事産業の足跡たどる 牧場長、県畜産場長の子孫4人


     
   中村さん(中央)の案内で岩手の馬事産業のゆかりの地を巡った新山春一さん、足澤至さん、下田靖司さん、一條八平太さん(左から)  
   中村さん(中央)の案内で岩手の馬事産業のゆかりの地を巡った新山春一さん、足澤至さん、下田靖司さん、一條八平太さん(左から)
 

 1891年(明治24)年から1922年(大正11)年にかけて盛岡市玉山区外山に存在した「外山御料牧場(皇室のための牧場)」や御料牧場閉場後、馬事産業を引き継いだ岩手県種畜場の歴代場長の子孫に当たる4人が17日、盛岡市で一堂に会し、日本の畜産業発展に貢献した先人の足跡をしのんだ。かつての輝かしい実績が、過疎化が進む地域の活性化にもつながればと願う。(馬場恵)

  集まったのは外山御料牧場の初代場長・新山荘輔(1856〜1930)のひ孫に当たる新山春一さん(71)=東京都品川区、県種畜場初代場長の一條牧夫(1858〜1938)の孫に当たる一條八平太さん(81)=盛岡市高松、県種畜場第3代場長板垣耕三(1863〜1934)の孫の下田靖司さん(81)=同市前九年、同第4代場長足澤勉(1887〜1954)の四男足澤至さん(86)=同市大沢川原=の4人。外山御料牧場・開拓研究会の中村辰司さん(50)の案内で、同市松尾町の馬検場や外山御料牧場・旧種畜場本場跡地などを巡った。

  皇室御用達の御料牧場は、明治期には千葉県の下総、北海道の新冠、本県の外山の3カ所にあった。当時の御料牧場は従業員にも守秘義務があり、内部のことは極秘。下総と新冠の牧場は存続したまま終戦を迎えたため、詳しい経緯が分かるが、大正期に閉鎖した外山御料牧場は、いまだ不明なことが多い。外山地区出身の中村さんは、古里の知られざる功績に光を当てたいと長年調査を続け、4人の場長の子孫を引き合わせた。

  新山荘輔は、日本獣医学の父と呼ばれる獣医学博士。畜産業の視察や種馬の選定、購入のため、たびたび欧米に渡った。得意のドイツ語で伊藤博文らの明治憲法制定に一役買ったとの逸話も。下総御料牧場の場長を34年務めたほか、新冠、外山の場長も兼務した。

  初めて、岩手のゆかりの地を訪問した春一さんは「生前の曾祖父は北海道から関西まで日本中を駆け巡り、海外にもよく出掛けている。写真で見ると小柄なのに、よくこれだけのことをやった」と感慨深げ。「今度は親戚、皆で岩手を訪れたい」と話した。

  一條牧夫は、御料牧場となる前の外山牧場で、西洋の牧場技術導入に力を注ぎ、岩手種場厩が県種畜場と改称された際に初代場長を務めた。岩手が馬産地として広く認められるようになったのは、牧夫をはじめ、歴代場長が指揮した馬産技術改良によるところが大きかった。

  牧夫は新山荘輔とは駒場農学校(現東大農学部)の同期生。八平太さんは牧夫と荘輔が同期生らと一緒に写った駒場農学校の集合写真(1879年撮影)を持参し「古い資料や互いの思い出話から初めて分かったこともある」と目を細めた。

  足澤至さんは、御料牧場の威光が残る県種畜場での暮らしを唯一、体験している。御料牧場から払い下げられた宮内省の紋の入った馬車で小学校に通学。馬車に向かって丁寧にお辞儀する人々の姿を見て、子どもながらに「申し訳ないと思った」と振り返る。

  周りの子どもたちはヒエやアワが主食だったが、自分は白米。家には牛乳が届けられ、おやつにワッフルを食べた。皇族方が避暑に訪れた際、お酌などの世話係をした思い出もある。「本当に寒さが厳しい所だったが、人々は純朴で礼儀正しい人ばかりだった」と懐かしんだ。

  下田さんは最近、出版した自伝的エッセー集がきっかけで、祖父の足跡を知った。一條八平太さんや足澤至さんとは旧知の仲だが「まさか、こんなつながりがあろうとは」とびっくり。「馬産は今でいう自動車産業のような位置付けだったろう。祖父が若いときにドイツ語を学んでいた訳がようやく分かった」とうなづいた。

  現在、外山地区には御料牧場の面影をしのぶものは、ほとんど残っていない。県種畜場は1937年に本場を滝沢に移転。1964年に県畜産試験場に改称、97年から県農業研究センター畜産研究所。

  中村さんは「調べていくと明治、大正期の馬事産業の発展が、岩手の他の経済も潤し、地域全体を活性化させていたことがよく分かる。過去から学んだことを、今後の地域の発展にも大いに役立てていく必要がある」と力を込める。

 


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