盛岡タイムス Web News 2014年  10月  9日 (木)

       

■  〈風の筆〉71 沢村澄子 登ったゾ〜!


 9月29日、早池峰山に登ってきた。唐突に「行く!」と決めて登ったのだが、いやはや想像以上の難儀。

  いや違う。想像も何も、自分がなんでそんな無謀なことを突然やる気になったのか、今もってよく分からないくらいなのだから、つらさのことは想定できていなかったに違いない。展覧会続きでストレスがたまっていたのか、とにかく考えなしに「登る!」と叫んで行ってしまった。

  天気には恵まれた。快晴。暑くなく寒くなく。風もなく心地よく。紅葉は既にピークを過ぎていたが、それでもアオモリトドマツの緑の間に、ミネカエデの赤がきれいだった。

  小田越コースは2・6`の道程。所要時間、上り2時間30分、下り1時間50分と看板にあったが、わたしは上り2時間20分、下り2時間30分かかった。

  とにかくもう上りで息があがってしまい、下りは足ももつれて自分の左足で右足を踏む始末。4、5回、転んでヒヤヒヤしながらやっとのことでの下山だった。

  途中、実は、本当に自力で下り切れるのか不安だったのだ。ガイドのお兄さんはつい最近ヘリコプターで運ばれた人があったなんて脅すし、山小屋のおじさんも心配してくれたのか、前や後にいては冗談ばかり言って笑わせようとするのだが、こちらに笑う余裕がない。とにかくとにかく、やっとのやっとの、必死の必死!

  20代の頃に数回登っているのだが、ン十年ぶりの早池峰山。その間に自分の体力がどれだけ落ちていたかを思い知る。この調子だと、岩手山登頂はもう無理なのかもしれないなぁ…。

  登山の翌日は両足太ももが筋肉痛で、ま、それが翌日出るうちはいいよね、と自分を慰めながら知人と電話。「え、え〜。登ったのォ?登ったのね〜。よかったじゃない。紅葉きれいだったでしょう」「景色楽しむ余裕はなかった」「お天気もよかったし」「もう少しでヘリコプターものだった」「いいよ。とにかく登ったんだからいいじゃない。いいのよ。登ったもん勝ちでしょ!」と彼女は言う。25年くらい前に一緒に岩手山に登った話なんか引っ張り出しながら、お互い年取ったね、早いねなんて話して、「また、お茶しましょ」「電話して」と言って受話器を置いた。

  しかし、その後も彼女の「とにかく登った」「登ったもの勝ち」という言葉がずっと耳に残っていて消えないのだ。それをいつやるのか、今でしょ、は確かにそうで、あしたが、いつかがあると思っているうちは、何事もなされない、日々やらなければならないことを優先させてるふりをして、ホントウのことから逃げてるのかもしれない、わたし。

  それにしても60代、70代の健脚の皆さんにたくさんお会いした。自分がちょっと情けなくもあった。けれどよくやったと褒めてやりたくもあり、また何かに挑戦してみたくもなった。

  そして、とにかく眠りこけて、翌朝はあちこち痛くてなかなか起き上がれなかった。
     (盛岡市、書家)


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