盛岡タイムス Web News 2014年  10月  16日 (木)

       

■  〈風の筆〉72 沢村澄子 「雨ニモ負ケソウ 風ニモ負ケソウ」


 盛岡市愛宕町の市中央公民館で「庭園アートフェスタ」が始まった。震災の年にスタートしたこの催しも今年で4回目。年々、盛岡市民に親しい秋の催しになりつつあり、今年はまた、はつらつとした作品ぞろいで見応えがある。26日まで。

  今年わたしは傘を作った。その材料としてこの1年にためた牛乳パックは156枚。それでも足りなくて近所の店のおじさんに「ください!」とせがみ、「芸術の秋だね。役に立つかな。頑張って」と励まされ、公民館に集まってきた皆さんと一緒に300枚余りを張り合わせて傘にし、庭園の池から突き出してみた。

  いつもできるだけ現地で作りたいと願うわたしは(現場のあらゆるものが織り込まれて作品に臨場感が出、作ってから持ち込むのとは別物になる)できる限りそれを実践しようとするのだが、するとギャラリーができる。人が集まってくる。「何やってんの?」「写真撮っていいですか?」「へ〜。こうして作るのね」「おたくこれ職業?え?書家?書家がなんでこんなことしてんの?」そんな会話が飛び交ってそのうち、手伝ってくださる方が毎年出る。

  昨年は、台風が来てわたしが搬入を延期しているのにかっぱを着て現場で待っててくださった方があり、担当者の人に言われたのである。「沢村さんは申し訳ないといって頼まないかもしれないけれど、実は手伝いたい、参加したい人がいっぱいいるんじゃないか」。それでついに今年は「やりますよ〜」と告知。「雨ニモマケナイ隊」が編成され、わたし1人の制作から、大事な人々も巻き込んでの大人数制作になったのだ。

  ところがそうなると、当然わたしが思い描いていた作品にはならなくなる。その小さな思惑より、もっと大事なことが生じてくる。

  まずは大人数が作業しやすい下準備。その難易度や安全性の吟味。当日が雨になる可能性もあり、かっぱを着て外で作業できる人ばかりでもないわけだから、屋根付きの作業場確保も必要に。そうして作業が始まると、まずわたしの段取りに関する説明はあまり効を奏さず、皆さん聞くよりやりたい訳で、個々に独創的制作。ホホホ。その展開を見ながら、あったようななかったような設計図を、わたしは何回も描き直した。

  その中でも一番大きな変更の決断は、書くことをやめること。一応書家であるわたしは、これまでどんな妙ちくりんな作品を作ろうとも必ず、どこかに字を書いていた。そこに自分の書家としての面目をもたせてあった。だから今回も、牛乳パック傘の外側を白くし、そこに賢治の「雨ニモマケズ」の詩を書こうと考えていたのだが、みんなが「きれいだ」「きれいだ」って言うのだ。つながれた300枚の牛乳パックの模様を。そして、ある人がどんどん大きくなるその傘に「力がある」ってつぶやいたその時、わたしが書くことよりその力が見えるようにすることの大事、得体の知れないその力が何であるかを問う必要が思われて、傘の表を牛乳パック柄に、字を書かない、と決めた。これが開幕の前々日!

  しかし、この傘、力があるくせにちょっぴりひ弱なんですよ。ですから、ご覧になりたい方はぜひ早めに中央公民館へ!
(盛岡市、書家)


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