盛岡タイムス Web News 2014年  11月  22日 (土)

       

■ 〈体感思観〉 編集局 大森不二夫 記者4半世紀、最後のコラム


 この4半世紀、バイクにまたがりながら、盛岡を中心舞台に、現場で記者の仕事をしてきた。取材先の話をしっかり聞き、その中にキラリと光る生の言葉を捉え、それらを紙面で伝えたい。そんな思いで取材してきた。

  記者生活の前半は学芸、後半は経済を中心に、極力、人に直接会い、話を聞くことに努めた。学芸担当時代は、アート、音楽、歴史、国際交流などの分野を担当。どの分野にも、盛岡、岩手を代表する人がいる上、どの分野も層が厚く、取材の大変さや面白さを知らされた。

  中でも彫刻家の舟越保武氏を取材したときは、制作への執念と真摯(しんし)なまなざしを痛感した。利き腕が病で侵され、左腕で制作していた晩年。「今まで見えない世界が、新たに見えてきた」と静かにゆっくり語った言葉は、今でも覚えている。謦咳(けいがい)に接することができた貴重な取材だった。

  みちのく国際ミステリー映画祭も取材した。毎回、来盛した作家の北方謙三氏には、大通の北日本銀行大通支店前で、歩きながらインタビュー。「派手でなくてもよいから、長く続けること。僕も大好きな盛岡に来たいから」と熱く語ってくれた。

  高橋克彦さんが、直木賞受賞祝賀会スピーチで「格好良い岩手、東北を描きたい」と、今後の抱負を述べた言葉も記事にした。

  21世紀に入り、学芸を離れ、主に経済分野の記事を書くことになった。地場の商店街や企業、商工会議所など今の活動や課題、今後の流れを捉え、伝える。そんな視点で、取材を開始した。まだ地域内で経済が回る時代。北東北一の繁華街の大通商店街はまだまだ活気があり、映画館も話題の映画が上映されると満席となるほど、まだ昭和の名残をとどめていた。

  しかし、盛岡市内にも新時代の波が急激に押し寄せ、第一書店、盛岡東映、ダイエー盛岡店など相次いで閉店し、開店より閉店の取材が増えた。そして前潟へのイオンの進出。商業地図が大きく塗り変わりだした。盛岡の商業、経済はどうなるのか、そんな率直な疑問から、イオンが来る直前、地元の商業者、経済人らに聞き、シリーズで記事にした。ある商店主が「竹やりでB29に挑むようなものだ」と話した言葉も、忘れられない。

  その後、小売り再編への動きが本格化。大手に対抗するため、ユニバース、ジョイス、そしてベルプラスが相次ぎアークスと経営統合し、新たな戦いが始まった。そんな大きな地域経済の変化に立ち会い、地場の商業者、経営者から多くのことを教えてもらいながら取材させてもらった。

  学芸と経済の取材。仕事に導入が飛躍的に進んだITに疎い私でも、多くの方に協力してもらい、取材ができた。感謝の一語。これまで本当にありがとうございました。
 


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