盛岡タイムス Web News 2014年  12月  17日 (水)

       

■  〈口ずさむとき〉414 伊藤幸子 「黒色の食物」


 出張の孫より土産何良きか問う電話あり涙滲み来
                             田畑建司

 先日、わが地区の定例短歌会に会員の方がかりんとうを持ってきてくださった。少人数なので1人2首新作を提出することになっている。難しい話はなしで、歌評というよりも詠草の中に自分と似た体験のものがあったりすると次々と話題が発展して盛り上がる。

  この歌では、出張先からお孫さんが「おみやげ何が良い?」と電話をくれたという場面。よく分かるけれど「涙滲(にじ)み来」とまで言わなくてもとの意見が多かった。でも作者は80代(男性)、3世代同居で、旅先からお孫さんが電話をくれるなんて、うらやましいと感じ入りながら、そのお裾分けの棒かりんとうを頂く。

  かりんとうって、どうして黒色なんだろう。私は不意に、黒色の食物が気になりだした。食の話をいっぱい書かれている林望先生の本の中に「まっくろな味」という項がある。氏のイギリス留学のころの体験談で実におもしろい。

  「イギリスのブラック・プディングという食品。その実態は豚の血に脂身などを切り加えて、塩やスパイスで味をつけ、腸詰めにしてボイルしてあるもので、これをソーセージのように輪切りにして、上にバターをちょっとのせてオーブンで焼く」という手順。固まって真っ黒になった豚の血って、想像するのが難儀だが非常に美味の由。

  豚の血でなく真っ黒な熊の胆なら私も持っている。夫の実家から結婚のときもらったもの。夫はたまに服んでいたが、耳かき一杯ぐらいのかけらでも水に浸すと鮮血の色に変わる。ひっつみ汁の具の形ぐらいで、何十年も欠いて服むことなく原形を保っているので今ではわが家のお守りのような常備薬だ。

  林望先生は、ブラック・プディングが真っ黒なのは、豚の血のヘモグロビンが固まってできた色であろうといわれる。洋の東西を問わず昔から人々は身近な動植物に薬効を求め、試しながら命をつないできた。

  ことしも黒豆を煮る時期になった。反射式ストーブに黒豆の鍋を載せ、ひがな一日忘れたように放っておくだけで、ものぐさ主婦にはありがたい食材だ。いつであったか、鍋に黒豆と金時豆を混ぜて入れてしまい慌てたことがあった。一晩水に浸すときによく見なかったらしい。翌日、昼の光のもとで黒豆と赤豆をより分けるむなしさ。でも帰省の子らにはそんな失敗談は隠して「得意の黒豆!」と笑って供して一年の息災を祈ったことだった。
(八幡平市、歌人)



本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします