盛岡タイムス Web News 2014年  12月  23日 (火)

       

■ 〈イタリアンチロルの昼下がり〉216 及川彩子 黄金カステラ


     
   
     

 12月に入ると、ここ北イタリアのアジアゴの街はクリスマス一色。店頭ばかりでなく、街角の特設コーナーにも「パン・ドーロ」と呼ばれるイタリアのクリスマスケーキが出回ります。高さ40a、重さ1`。山高帽のような形の黄金(ドーロ)のパンケーキで、子どもたちもかぶりついて食べます[写真]。

  私が、イタリアで初めてクリスマスを迎えたのは18年前。街のケ―キ屋さんを何軒も回り、生クリームやチョコ、イチゴなどの果物でデコレーションされたスポンジケーキを探し歩いたのですが、そのようなクリスマスケーキがないことを知り、がっかりしたのでした。

  そこで「郷に入っては郷に従え」と、街で買った伝統の大きなパン・ドーロにナイフを入れると、切り口
、味わいは、まるでカステラ。雪のような粉砂糖を振りかけると、気分も一層盛り上がるのでした。値段は一箱500円ほど、賞味期限も春までの経済的な菓子です。

  日本の和菓子と言っても過言ではないカステラは、室町時代、ポルトガルの宣教師によって紹介されました。卵、砂糖、小麦粉のみで作られるので、乳製品を食べない当時の日本人の間で瞬く間に流行したのです。カステラの名の起源は、当時のスペイン王国のカステリャ地方の名物だったからとか。

  先月、家族で訪ねたポルトガルで、イタリアのパン・ドーロの由来と言われる伝統菓子「パン・デロー」を、リスボン近郊の食堂で勧められました。それは、見た目も味も、懐かしいフワフワのカステラでした。

  聞くと、バターなどの乳製品を使うパン・ドーロと違い、材料も作り方も、南蛮菓子と言われたカステラと同じ。けれども、あえて卵に完全に火が通らない程度に焼き上げ、生焼けの食感を楽しむのがポルトガル流とのこと。卵が貴重だった昔は、クリスマス唯一のごちそうだったそうです。

  西端の国で出合った歴史の味。今年のパン・ドーロが一味違う、わが家の年の暮れです。



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