盛岡タイムス Web News 2014年  12月  25日 (木)

       

■  〈風の筆〉82 沢村澄子 年末、年について


 今年もお世話になりました、とつい言いたくなる2014年最終回の風の筆。読んでくださった皆さん、本当にありがとうございました。

  とことん引きこもりで、日頃は自宅を出るのは近くの産直に行く時くらいという生活。そこで毎週四苦八苦しながらこの稿を書いていても、いいんだか悪いんだか皆目見当もつかず、正直なところ、展覧会前に作品ができてないのに作文だなんて〜と、半ベソの夜がないわけでもなかった。

  けれど、先日の盛岡での個展会場に「モリタイ読んでますよ!」ってお客さまが何人もいらしてくださって、勇気百倍。下手な作文書いてていのかな〜、生きててよかったな〜、という感じがして、改めて、感謝!

  その時、皆さんそろっておっしゃるのは「もっと年いってると思ってた」「若いね」。わたしを何歳くらいに想像してたかって「70歳くらい」ですって。それはあんまりだ〜、と大笑い。

  ところで、先日、台風直撃の日に盛岡へ仕事に来た人と夕飯を食べた時のこと。1日目は台風でお客さんはゼロ。2日目は1人。新幹線代ホテル代大赤字。利の出ない出張先の1人ご飯は切なかろうと、わたしから彼女を食事に誘った。

  ところが淡々と彼女、まずワインをけなし、料理をけなし、店員さんをけなし、その合間合間にわたしをけなし続ける。2泊3日で出張してきて売れなければ、その経費たるや、会場だって借りてたわけだし、そりゃ大変だと、こちらは「忍」の一字。何を言われてもへらへら笑って、適当な相づちを打ち続けていた。

  そこへ、「こないだ、沢村さん、手紙くれたよね。イヤよね。書家の手紙って。ケレン味があってサ」と彼女が言い始め、さすがに「ねぇ。なんでさっきからずっと否定ばかりするの?」と返すと、「否定なんかしてないわよ。私は私の意見を言ってるだけよ。それを否定に感じるなんて被害妄想でしょ」と彼女。「何を感想するのもその人の自由だとは思うけど、一緒に食事している目の前の人間をわざわざけなさなくっても…。楽しく食べない?」「あら、私の方が年上なのよ。年上に逆らうの? 年上の言うことは聞きなさいよ。私だったら年上に何言われても耐えるわよ!」確かに彼女は二つ上だ。で、一瞬考えたのだけれど「わたしは耐えない」とわたしは断言した。

  そしたらもう矢継ぎ早とはこのこと、というような攻撃の言葉がわんさか降ってきて、10分ほど、ただただそれをくらっていたわたしが、ほろっと静かにヒトゴトみたいに言ったのだ。「さっきから年上、年上って言うけど、その年上って、生まれた年から数えてでしょう?死ぬ時から数えたらどっちが上かは分からないのよ」

  年のウエ、シタ、なんてそんなものだと思うのです。おまけに仮に、輪廻(りんね)まで考え合わせたら、今世以前にその人がどれだけ生きていたかも分からない。そして、他者への、尊重、理解、慈愛といったようなものは、それとはまた全くの別次元。ウエもシタも関係のないこと。だから皆さん、今年も大変お世話になり本当にありがたかったです。またじきに来る新しい年も、どうかよい年でありますように。
(盛岡市、書家)


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