ダムへの道をまたぐ高架橋に
猫の骸
車道から引き摺り寄せた跡の
あかく染まった雪に
凍えた朝の光りが反射していた
猫は晒され
橋上は飢える鴉の食卓になった
裂けた腹や胸、顔
啄む始末に無駄はなく
ある日、穿たれた目の
毛皮が横たわっていたが
その襟巻きのような洞も
いつしか消えて
わたしの記憶も薄れていった
冬晴れの冴えた空に
鴉が啼くと
あれは鴉 わかっているのに
いまも鴉の目玉に宿り
自由に飛ぶ猫に見える
試運転の
バイクのエンジン音が響いてきて
まるで春
のこんな日に
路地に蹲る(はずもない)鴉と
眼が合ったりするのだ
夜更けの道の真中で
轢かれてしまった猫が
一月の空を飛んでいる
さむがりのおまえだから
カーッと
ひと声啼きながら
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