盛岡タイムス Web News 2015年  3月  8日 (日)

       

■ 〈教育ほっと茶話〉2 野口晃男


  第3話【粘土学習に参加しない子】

  1年生の学級担任をしていたとき、こんなことがありました。

  土粘土を使った公開授業をした時のこと。困ったことに、授業が始まって10分も過ぎたというのに、A君が教室の隅っこでじっとしています。土粘土で汚れるのと、ぬらぬらした感触が嫌なのでしょう。

  その様子を見ていた参観の先生が、何やらノートに書いています。きっと、研究会で質問することを書いているのでしょう。

  「A君が授業に参加しなかったのはなぜか」「授業に参加させるために、授業者はどんな手立てを考えていたか」「たとえ1人でも、授業に参加しない子がいたら、授業としてはいかがなものか」

  授業者としては、応答に窮する質問です。そこで私は、A君にそっと耳打ちしました。その瞬間、A君は喜々として授業に参加しました。応答に窮する質問が消え、安堵(あんど)していたのに、研究会で、その子に関わる質問が形を変えて出されました。「あの時、何を耳打ちしたのですか」

  わたしは、隠すことなく正直に答えました。「特別のことではありません。『ほら、見てごらん。B子ちゃんも遊んでいるよ』と言っただけです。実は、A君はB子ちゃんにほのかな恋心を抱いていたのです。大好きなB子ちゃんが楽しんでいるのだから、自分も一緒に楽しもうと決意したのです」

  間髪を入れず質問が飛んできました。「恋心をどうして分かったのですか」私は、隠すことなく正直に答えました。「給食時間に分かったのです。B子ちゃんが『わたし、納豆大好き』と言って食べるのを見て、納豆が大嫌いなはずのA君が恐る恐る食べ始めたのです。男性というのは、好きな女性が好むことであれば、自分も好きになろうと努力する生きものなのです」 第4話【吠える犬を怖がる友達】

  わたしが中学生の時、こんなことがありました。犬をとても怖がる友達がいました。学校からの帰り道、ある家の前を通りかかった時のことです。犬がけたたましく吠え出しました。

  案の定、友達はその家に近づこうとしません。わたしは、怖がって立ちつくしている友達に言いました。「大丈夫だよ。鎖につながれているから」。ところが、友達はけたたましく吠えている状態が苦手らしく、まだ怖がっています。

  そこで、私は、祖父から聞いたことわざを例に出して言いました。
「大丈夫だよ。吠える犬はかみつかないっていうことわざがあるんだから…。そもそも、あの犬は、自分が怖いものだから、ああやって吠えているんだよ。人間にだって同じことが言えるんだよ。ちっぽけなことで威張っている人間は、たいしたことのない人物だというじゃないか」

  ところが、その友達は恨めしそうに私を見ながらきっぱりと言いました。「絶対に嫌だよ! だって、そのことわざをあの犬が知っているかどうか分からないじゃないか」 (元盛岡市立中野小学校長)


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