盛岡タイムス Web News 2015年  3月  15日 (日)

       

■ 〈ジジからの絵手紙〉84 菅森幸一 善隣館


 

     
   
     

 今、盛岡駅方面から不来方橋を渡った最初の交差点の御厩橋への曲がり角に、古色蒼然とした洋館が建っている。昔はもっと大正館に近く、わが家からは5分もかからなかった。市民センターとして活用されているが、そもそもは派遣宣教師の住居として建てられたものであって、付属の建物も含めジジたちは善隣館と呼んでいた。

  戦争中は住んでいた宣教師夫妻がスパイ容疑で拘束されるという悲しい出来事があり、何も知らぬジジたちはこの善隣館を「スパイの館」として恐れおびえ、できるだけ近づかないようにしていた。

  戦後、しばらくしてから善隣館の裏に住んでいたA君が「善隣館さダービンみでなオナゴいるっけじぇ」とジジにささやいた。ダービンとは当時「オーケストラの少女」とか「春の序曲」の名作で銀幕をにぎわした美人少女歌手デイアナ・ダービンのことで、ジジは大いに熱をあげていた。さあ大変!彼女を一目見たさに暇さえあれば善隣館の周りをウロつくようになった。

  雨の日も風の日も善隣館詣でが続いたがダービンの影も形も見えず、やっと目がさめたのは、クラス全員がA君のホラ話に気が付いてから一週間も後のことだった。

 


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