盛岡タイムス Web News 2015年  3月  18日 (水)

       

■  〈花林舎流庭造り─よもやま話〉28 野田坂伸也 ダーチャはロシア民衆の故郷


     
  ヨーロッパで見たジャガイモ畑。こんなに畝幅が狭くていいのだろうか  
  ヨーロッパで見たジャガイモ畑。こんなに畝幅が狭くていいのだろうか
 

 ロシアには「ダーチャ」という菜園付きセカンドハウスがある、という話は何かの本で読んだことがありますが、それがどういうものなのか詳しいことは知りませんでした。昨年本屋のガーデニングの棚で、豊田菜穂子著「ダーチャで過ごす緑の週末 ロシアに学ぶ農ある暮らし」と言う本を見つけ、買って読んでみました。

  驚きました。ダーチャは強いて日本語に訳せば菜園付きの別荘≠ニいうことでしょうが、とてもそんな生易しいものではなくロシアの民衆の生活を根底から支える、なくてはならない場所だったのです。ソビエト連邦が崩壊してロシアになった時、ロシアの人々が飢え死にしないで済んだのはダーチャがあったから、という記事を見たことがあるのですが、その時は菜園程度で飢え死にを免れるなんてずいぶんオーバーことを言うものだな、と思っていました。しかし、どうもそれは事実のようです。「ロシアの全世帯の8割がダーチャを持ち、国内のジャガイモ生産量の90%をまかなっている」のだそうですから(もっともどうやって全ダーチャで生産されるジャガイモの量を推計できたのかは分かりません)。

  ダーチャ1区画の標準面積が600平方b(180坪)と聞くと日本人なら絶句してしまうのではないでしょうか。日本の市民農園は5坪以下というのは珍しくありません。そんな広い菜園(というより農園ですね)をなぜ持てたのかというと、国家緊急事態が起きた時に国民が自給して飢え死にしないで済むにはこれくらいの土地が必要であろう、という判断で決められたのだそうです。そもそもダーチャはロシアに革命が起こって土地が国有化されたときに取り上げた農地の一部を農民に無償で払い下げたのが起源とされています。その後、都市住民にも土地が与えられ、多くの国民がダーチャを持てるようになったわけです。

  ロシアの学校の夏休みは3カ月もあるので、都会の子どもたちも夏休みの間はダーチャで田舎の生活を満喫するのです。ロシア人はたいていのものは自力で作ってしまうのが昔からの習性になっているとのことで、ダーチャの家も何年もかけて自分で作ってしまうそうです。

  600平方bもあると日本のガーデニングの庭のような手のかかる庭は作れませんから、野菜畑と果樹園と芝生が主体の土地利用になります。ラフでおおらかなにわ≠ナすが写真で見るとそれがとても楽しそうです。実は美しさにこだわるガーデニングスタイルの庭よりも私はこういう庭の方が好きです。日本人にもこういう昔の農家の庭スタイルの庭が好きな人は結構いると思うのですが、広い面積がないとできないので日本では花の庭ばかりになっているのでしょう。

  でも、近年は放棄された耕地が増えていますから農地法を変え、耕せない田畑は使いたい人に売る、または貸す、と考える農家の方が増えれば日本でもダーチャが実現できるわけです。期は熟していると思います。衰退していく田舎を活力ある場所に変えていくのにも有効な手段ではないでしょうか。大規模農家を増やしてアメリカやオーストラリアの農家と競わせるという、ばかげた政策よりずっといいと私は思います。


本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします