盛岡タイムス Web News 2015年  3月  21日 (土)

       

■ 〈体感思観〉 文化の力で復興を 馬場恵 


 
 東日本大震災から丸4年。被災地の復興に文化や芸術が果たす役割の大きさを実感している。

  滝沢市の認定NPO法人「劇団ゆう」は沿岸被災地で子どもたちの出演者を募り、盛岡など内陸部から訪れる劇団員と一緒に、ミュージカルの公演をする支援活動に取り組んできた。

  子どもたちの指導に当たる劇団員の小川千春さんの話が興味深い。子どもたちの中には、ほとんど笑顔を見せず「どうして、この子は、ここに来ようと思ったんだろう」と気になる子がいるという。だが、子どもは子どもなりに舞台に立つ意義を見いだしている。

  不登校だったある女の子は、ミュージカルへの出演がきっかけで学校へ足が向くようになった。まだ笑顔は少ないが、本番終了後、「ありがとうございました」と自ら感謝を伝えに来た。「来年も来てくれる?」「うん、やる」。短いやり取りに心が通う。

  「1年にたった1回。だけど、その子にとって心のよりどころになっている」と小川さん。被災地での公演を毎年、続けていくこと、自分自身が変わることなく、出会う子どもたちと真摯(しんし)に向き合うことの重みをかみしめる。

  盛岡市の復興支援学生寮で暮らしながら、介護福祉士を目指して専門学校で学ぶ岡本詩央里さん(19)。彼女を支えているのも文化だ。陸前高田市出身の岡本さんは中3のときに被災。災害の爪痕が深いまちで、高校の音楽部の活動と地元の祭りが、悲しみを乗り越える力になった。

  津波で地域のほぼ全戸が流出。ばらばらの場所に住まざるを得なくなった地域住民の心を結ぶ祭りを続けるために発足したのが「川原祭組」だ。もともと住人だったメンバーは30人足らず。だが、祭りになると、その心意気に魅せられた県内外からの応援団が加わり100人近くに膨らむ。

  岡本さんは盛岡に進学した今も、生粋の川原組の一員として呼び戻され、七夕山車の笛や獅子舞の「才坊振り」を担う。

  「まちがなくなったからといって古里がなくなった訳ではない。(大切な)人がいるからこそ古里」。よどみない言葉に胸が熱くなる。

  NPO法人いわてアートサポートセンターが盛岡市内で開いたフォーラムで、ジャーナリスト外岡秀俊さんは「つらい体験から立ち上がるストーリーを紡ぐ上で大きな役割を果たすのが文化」と話していた。広がる内陸と沿岸の意識の格差を埋めるのも文化だと。

  「心の復興」が大きな課題と言われている。人と人とをつなぐ文化や芸術の可能性に期待したい。


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