盛岡タイムス Web News 2015年  4月  12日 (日)

       

■ 〈教育ほっと茶話〉4 野口晃男


  第7話【紅茶を飲んでいた学生】

  大学の教室で、こんなことがありました。午前の授業が始まる10分ほど前のこと。教室に入った瞬間、ペットボトルの紅茶を飲んでいる学生が目に留まりました。私は、その学生に厳しく声をかけました。

  「何を飲んでいるんですか!」その学生は、一瞬どきりとした顔をして、口をとんがらせて私を見ました。バッグから携帯電話を取り出し、時刻を確認し、相変わらず解せない顔をしています。

  近くにいた学生たちも、教室の時計を指差し、「先生!まだ授業開始前ですよ」と目で訴えています。そこで私は、はっきりと言いました。「皆さん、よく見てください。このボトルのラベルには『午後の○○』と書いてあります」

  瞬間、教室全体が大爆笑に包まれました。この日を境に、それまで教室のあちこちにあった机上のペットボトルは見事に消えてしまいました。授業中の水分補給を禁じるなどという意図はなかったのですが、どうやら、私から飛んでいく言葉の手裏剣を警戒したようです。

  気まぐれで言った冗談のせいで、担当している講義とは関係のない「熱中症対策と水分補給の必要性」という保健指導を追加する羽目になってしまいました。

  第8話 【長寿の秘訣(ひけつ)】

  M市主催の老人大学で、高齢者を対象にした講演を行った時の話をしましょう。講演の中で、長寿の秘訣を三つ紹介しました。

  @小言を言わずに笑顔で暮らす。A塩分と肉類を控えめにして、魚と野菜中心 の食事に心がける。B自分に都合の悪いことは、聞こえないふりをする。

  参加している皆さんが、真剣にメモしておられました。特に、三つ目の秘訣を紹介した時などは、ほとんどの方がニコニコとうれしそうにうなずいていました。実は、この場面の一番のおかしさは、話を聞いている皆さん全員が、私よりはるかに高齢であるというところにあります。

  この場面は、あたかも卒業を間近にした小学6年の児童が、幼稚園児を講師に招き進学後の話を開いている情景に似ています。幼稚園児が「豊かな中学校生活を送る秘訣」を伝授し、もうすぐ中学生になる6年生が目を輝かせ、時折うなずきながら真剣にメモをとっている情景と同じなのです。
  (元盛岡市立中野小学校長)


本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします