盛岡タイムス Web News 2015年  4月  25日 (土)

       

■ 〈体感思観〉 「心の酒、幻の酒」 編集局 泉山圭


  私は日本酒党でもなければ、お酒を飲む機会が頻繁にあるわけでもない。ところが、岩手川という名前には、なぜか懐かしさや親しみを覚える。県民の多くが耳になじんだ「岩手ふるさとヨ やさしい国だヨ…」のCMのせいかもしれない。盛岡市鉈屋町のもりおか町家物語館で7月12日まで開催中の「心の酒です。岩手川展」は、親近感が一層強くなる企画展となっている。

  恥ずかしながら、私は記者という仕事に就くまで、市の保存建造物に指定されている江戸時代後期の浜藤の酒蔵や大正時代に建てられた大正蔵などの存在はもちろん、岩手川の工場が鉈屋町にあることすら知らなかった。言われてみれば、周囲には大慈清水や青龍水など豊かな水があり、酒造りにはもってこいの場所だ。

  今回の企画展では、そうした岩手川の歴史も知ることができるが、会場に並ぶさまざまな瓶やラベルを眺めているだけでも楽しい。贈答用などに作られたとみられるだるまやタヌキの形をした日本酒の入れ物、おもしろいものでは一升瓶からとっくりなどに注ぐ際にこぼれないようにするため購入者に配られた道具なども展示されている。取材に訪れた際も瓶やラベルを眺めては一人ニヤニヤとしていた。

  先日、盛岡まち並み塾調査活用委員会の渡辺敏男さんから同企画展に併せて発行した本「こころの酒 岩手川」をいただいた。渡辺さんは本の中で「地域の人々の営みが、時間の中で積み重なると固有の文化になるとすれば、『岩手川』も、盛岡の文化、歴史を知ることができる数少ない遺伝子のひとつ」と書いていた。

  岩手には数多くの酒造メーカーがあるが、大の岩手川ファンだったという同館の長内努館長も「すごく身近な生活の中にあるお酒のイメージが強い」と話すように、岩手川はきっと庶民に愛された代表格だったのだろう。私も岩手川がなくなる前に、一度くらいは多くの人を魅了した味を味わっておけば良かったと思う。


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