盛岡タイムス Web News 2015年  5月 10日 (日)

       

■ 〈教育ほっと茶話〉6 野口晃男


  【第11話】全校朝会でよそ見をする子

  全校朝会で、わたしが話している時に、1年生の子がよそ見をしていました。わたしは、その時は注意せず、話を続けながら右手の親指を赤く光らせました。その日の教室では、校長先生の指が光った話で持ちきりだったようですが、その子だけはとても悔しがっていたそうです。

  翌週の全校朝会で、その子は目を大きく開いて、指が光るのを期待しながら最後までしっかりと話を聞くことができました。話が終わって降壇する時には、ご褒美として、親指が光るマジックを披露しました。

  児童への校長講話は、校長が行う授業です。常に「子どもの何を育てるか」という狙いを持つ必要があります。

  今回は、よそ見をさせないのが狙いではなく、話を最後まで集中して聞ける子にすることが狙いです。そこで、その子自身の意思で壇上に注目する裏技を試みたのでした。

  第12話【お金をせびる子】

  3年生の学級担任をしていた時、わが子を嫌いになったという母親がいました。お手伝いをした後、ご褒美など要求したことのないA君が、最近急にお金をせびるようになったというのです。

  そこでわたしは、男の子だけを対象に、嫌われずにご褒美をもらう裏技を教えました。
  1 玄関掃除が終わったら、「これからも玄関は、ぼくに任せてください」と言う。
  2 お母さんの顔の微妙な変化を見ながら、「ご褒美はいりません」と断言し、続けて「2百円なんてとんでもない」と言う。
  3 言い終わったら、ゆっくりとお母さんに背を向け、肩を落としつつ寂しげにその場を去る。3歩進んだら、哀れな声で「せめて50円…」と言う。

  最後に、こう付け加えました。「いいですか皆さん。皆さんのお母さんは女性ですよね。女性というのは、去りゆく男性の後ろ姿に何かを感じるものなのです。欲しいものがあるからといって、欲しい欲しいと迫ってはいけないのですよ」

  翌週の月曜日、ほとんどの子が「うまくいきました。ご褒美をもらえました」とうれしそうに話してくれました。

  実は、A君がお金をせびるようになった原因と責任は、担任の私にありました。

  ある子が「ぼくのお母さん、昨日から熱を出して仕事を休んでいます」と話したので、「そんな時は、お小遣いでマルメロ(カリンに似た果物)の缶詰を買ってごちそうするといいよ。熱がある時には特においしいんですよ。きっとすぐに良くなるからね」と教えたのです。

  隣で聞いていたA君は考えました。「困ったなー。ぼくはお小遣いを貯めていない。お母さんが病気になったらどうしよう。そうだ!今からでも少しずつお金を貯めよう!」

  A君が急にお金をせびるようになったのは、お母さんが熱を出して寝込んだ時に、マルメロの缶詰を買うためだったのです。

  家庭訪問でこのことを伝えた時、A君のお母さんの目には涙が光っていました。
  (元盛岡市立中野小学校長)


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