盛岡タイムス Web News 2015年  5月 23日 (土)

       

■ 〈体感思観〉馬場恵 引き締めて文化財行政


 
 滝沢市鵜飼狐洞の土地区画整理事業で、市指定史跡「餓死供養塔」の参拝スペースだった市有地の一部が、埋蔵文化財の調査をせずに宅地開発された問題を取材した。隣接する埋蔵文化財包蔵地を遺跡として届け出ていなかった市教委のミスもあり、手続きがあいまいなまま開発が進行。民家が建ったあと、問題が明るみに出て、事情を知らずに土地を購入した所有者にとっても迷惑な結果となった。

  文化財調査が未実施のまま、宅地に含まれた面積は、ごくわずか。既に周囲で発掘調査が済み、問題なく開発が進んでいれば「そんな細事にこだわらなくても」という発想も生まれがちだ。だからこそ、文化財を保護する立場の行政の指導力が問われる。

  特に、今回のケースは市指定史跡の周囲の土地の取り扱いを巡るもの。しかも、市はこの土地区画整理事業を進める組合の組合員である。史跡と埋蔵文化財に直接的な関係はないにしろ、工事着手前に、開発側と市教委が、餓死供養塔の周囲の環境の在り方も含めて慎重に協議すべきだった。

  例え、ミスが分かっても「黙っていれば丸く収まる」と見て見ぬふりをするのも、こうした話にはありがち。だが、あったことをなかったことにする姿勢は後々、もっと大きな間違いを引き起こす。本来、踏むべき手順を怠ったために、調査にかかった時間と労力を無駄にしないでほしい。

  もう一つ気になるのは、同市の文化や教育に関わる職員の手薄さだ。埋蔵文化財センターの職員は所長以外、時短勤務の再任用職員と臨時職員。同市は県から文化財保護法に基づく埋蔵文化財の発掘の届け出、指示、命令などの権限を委譲されているが、開発に伴う専門的な判断ができる職員は、この再任用職員も含め二人だけ。一人は沿岸被災地に応援派遣中だ。センター長を務める生涯学習文化課長は、公民館長、図書館長と計四つの役職を兼務している。

  市民5万人の規模に対して市職員の数は少なく、どの部署も人手は足りないという。専門職員の増員が容易でないことは承知だが、問題が発生したとき複数の目でチェックできる体制整備が必要ではないか。


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