盛岡タイムス Web News 2015年  5月 26日 (火)

       

■  〈おらがまちかど〉59 馬場恵 矢巾町 南矢幅地域


     
   「水曜日の午後」店主の辻山文子さん。靴を脱いで上がる店内はレトロな雰囲気。コーヒーや和のハーブティーを味わいながら、ゆっくりくつろげる  
   「水曜日の午後」店主の辻山文子さん。靴を脱いで上がる店内はレトロな雰囲気。コーヒーや和のハーブティーを味わいながら、ゆっくりくつろげる
 

 シンガーソングライター・小田和正さんの一曲を店名にした茶房「水曜日の午後」。矢巾町南矢幅の不来方高校向かいにある白い蔵の喫茶店だ。開いているのは毎週水曜日から金曜日までの正午から午後6時まで。営業時間を「覚えてもらうのにもちょうどいい」とこの名に決めた。

  店主の辻山文子さん(57)は学生時代から大の小田ファン。一級建築士の夫、俊明さん(61)の仕事を手伝いながら、子育てや両親の介護をこなす日々、歌に励まされてきた。

  子育ても、親の介護も、きちんとしなければと思いつつ、「それだけで終わっていいの」とも考え始め、女性の起業を支援する、もりおか女性センター主催の講座に参加。起業を志す仲間にも支えられ、2009年、週の半分、半日だけの喫茶店を始めた。

  明治時代の蔵を改装した建物は1階が茶房、2階は俊明さんの事務所。2階に上がると、歴史を刻んだ見事な太いはりが建物の芯になっているのがよく分かる。俊明さんが親戚の蔵を譲り受け、97年に奥州市水沢区から移築した。

  「ここ、お茶、飲めるとこにしたら」。喫茶店開業を決意するきっかけは、蔵を移築させる土地を貸してもらった大家の藤原悦子さん(85)の一言だ。藤原さんは蔵のすぐ裏に屋敷を構える大農家のお母さん。盛岡に自宅がある文子さんにとって、周囲一帯に水田が広がっていた時代から家を切り盛りし、地域をよく知る藤原さんの言葉は心強かった。

     
  明治時代の蔵を改装。2階が設計事務所、1階が茶房「水曜日の午後」  
  明治時代の蔵を改装。2階が設計事務所、1階が茶房「水曜日の午後」
 


  「あちこち出歩くのは大変になったけれど、お茶飲みぐらいには行けるからね」と藤原さんは目を細める。

  まだ何かできるかもしれない―。「水曜日の午後」の歌詞は、子どもたちが巣立ち、自分らしい生き方を求めて歩み出した今、背中を押す応援歌にも聞こえる。「気軽に立ち寄って、ゆっくりとしてもらえれば」と丁寧にコーヒーを入れる文子さん。「さらに年を重ねたとき、心から『楽しい』と言えるようになりたい」とほほ笑んだ。
  (馬場恵) 


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