盛岡タイムス Web News 2015年  6月 10日 (水)

       

■  〈花林舎流庭造り―よもやま話〉34 野田坂伸也 はやらないが石積みが好み


 今回は植物の話題は一休みして「石積み」についてお話しします。

  ガーデニングが庭造りの本流になってから、れんがやタイルあるいはコンクリート製品のような人工の庭園材料を使用して造られる庭が圧倒的に多くなりました。私はそのような本流に背を向けて10年ほど前からはもっぱら自然石と砂利を庭造りの材料とするやり方を続けています(そのほかにアスファルト破片を使うこともあります)。以前はれんがをよく使いましたが年を取るにつれて自然石│それも熔岩がほとんどです│だけという庭に変わりました。幸い、若いお客さまは私のところへは全くおいでにならず、自然石を使った渋い庭が好きな年配の方が口コミで聞いてやって来られます。

     
  人力で積んだ石積み  
 
人力で積んだ石積み
 


  先週、自宅の敷地の西側境界の一部に延長5b、高さ80aの石垣を作りました(垂直に近い形で石を積んだものを、「石垣」とか「石積み」と言います。この二つの用語が全く同じものを指すのか、若干違う意味なのかは分かりません。切石、割石などをきちんと積んだものが「石垣」で不定形の自然石を積んだものが「石積み」かな、とも考えましたがこの文章の中では区別なしで使っています)。

  ここは30度ほどのやや急な斜面になっていて、中央付近に大きなナンジャモンジャノキが1本立っています。3年前に植えたのですが傾斜地のため根鉢の一部が露出していて、これまではベニヤ板を寄せ掛けて乾燥防止の役目をさせていたのですが、みっともないので石垣を作って土留めとし、根の周りに土を載せようと思ったわけです。

  ベニヤ板をどかしてみると1bばかりのヘビが2匹出て来て(1匹はシマヘビ、もう1匹はジムグリでした。マムシが多い場所なのでもしやと思ったのですが無毒のヘビでほっとしました)慌てて近くの土の穴の中にもぐりこんでいきました。

  積む石は雫石町の農家の人が畑を作る際に地中から出てきた邪魔な石を、タダであげるから、と言ってくださるのでありがたく頂戴しました。ただ、大きすぎる石や小さすぎる石が大半でしたが、無料で手に入るというのは何といっても助かりますから全部もらって、あとは工夫して対処することにしました。

  一番大きい石は大きさを測り比重を2・5として計算すると80`と推定されました。そのほか70`、60`、50`内外と推測される石が8個ほどありました。80`となるとトラックの荷台に乗せるのが一苦労ですが、花林舎では全て人力でやってしまうのです。とはいっても私は今は動かせるのは口先だけで、重いものを持つのは2人の力持ちの若者です。この若者たちはあるコンサルタント会社の社員ですが、重いものを動かす仕事があるときは手伝いに来てくれるので、たいていの仕事はやってしまえるのです。現代の造園業者で重機を使わないで仕事をしているところはほとんどありませんから、たいていのことは人力だけでやってしまう、わが社のような存在はたいへん珍しく、驚かれます。そのうち岩手県の無形文化財に指定されるかもしれません。そのためには会社名を「野田坂緑研究所」ではなく「岩手人力造園株式会社」にした方がいいのではないか、と言う人もいましたが面倒くさいのでまだ元のままです。

  でもこれくらいの規模の仕事ですと機械を使うより人力でやる方がずっと速いのです。1段目の石を並べるのは20分しかかかりませんでした。大きな石でも転がせば容易に動きますから、ごろごろポン、という感じで次々に並べていくのです。この場合も私は指示するだけ、石を転がしていくのは2人の若者です。なぜか私は力持ちの若者が来る日になると急に力がなくなって5`の石を持ち上げるのがやっと、という状態になるのですからそれもやむを得ません。

  さて、1段目は簡単にできてしまうのですが、2段目、3段目になるとちょうど合う石がなかなか見つからず、はるかに時間がかかります。見栄えが良く頑丈な石積みを作るには、持ってきた石の半分は捨ててしまうくらい多くの石を運んできて、その中から選別した石を使うのですが、人力造園の弱みはそんな大きな労力をかけることが難しい(いくら力持ちでも、持ってきた石の半分は捨ててしまうのでは疲れてしまってやれない)ことです。結局持ってきた石を何とか工夫して使い切り、終わりとしました。見栄えはよくないのですが、崩れないようにしっかりしたものにはできました。


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