盛岡タイムス Web News 2015年  6月 14日 (日)

       

■  空を制した鬼の「白星」 盛岡狙った戦略爆撃 空襲体験者に聞く 戦後70年 不来方の星条旗@


     
   マリオス最上階から当時の防空頭巾をかぶり、B29の模型を手に、空襲で焼けた盛岡駅前を見下ろす菅森さん  
   マリオス最上階から当時の防空頭巾をかぶり、B29の模型を手に、空襲で焼けた盛岡駅前を見下ろす菅森さん
 

 今年は第2次大戦終結から70年。昭和20(1945)年8月15日の終戦後、連合軍は本県にも進駐し、盛岡市は初めて星条旗のもと異国の支配下に入った。敗戦とそれに続く占領体験はいかに県民の意識を変えたのか、終戦直前の盛岡空襲から、米国による軍政期まで、当事者の証言や記録でたどる。(鎌田大介)

  星条旗の白星は、「空の要塞」の爆音とともに降ってきた。昭和20年3月10日の東京大空襲と同じ夜に「B29」1機が侵入し、盛岡駅周辺に焼夷弾を投下した。闇に溶け込んだ銀翼は、「鬼畜」と憎んだ米国の軍事力をもって不来方の地を踏み荒らした。

  戦前の盛岡は、ゆかりの東條英機、板垣征四郎、米内光政、及川古四郎など陸海軍の将帥が内閣にあり、戦争指導に影響力を持った土地柄だった。東條内閣は44年のマリアナ諸島失陥の引責で総辞職。その島々にB29の航空隊が進出し、日本列島の大半を戦略爆撃の射程に収めた。

  当時、盛岡駅前に住んでいた盛岡市の森雄一さん(82)は厨川国民学校6年の12歳だった。少年の必勝の信念はその日まで揺るがなかった。「最高の軍国主義に抑えつけられていたので、絶対に神風が吹いて勝つと。全然負けるとは思っていなかったが、不満はあった。大本営発表がおかしいのではないか、何かを隠している。戦争が始まったころは戦果が出ていたのに、玉砕などと聞くとおかしい、だんだん戦場が日本に近づいてくる」。

  市民生活は窮乏しても、まだ盛岡の街は無事だった。空襲の開始は3月10日午前2時半ころ。森さんは「ぐっすり寝ていたら、急にパーッと爆風と閃光で目がさめた。焼夷弾が駅前全般にばらまかれた感じ。わが家には風呂場にひとつ落ちた。父母があわてて風呂の水で消したが、後ろにポンプ会社があり、油があってどんどん燃えた」。

  盛岡駅前から大沢川原にかけて155戸を焼き、613人が被災し、死者3人、負傷者5人を出した。大雪が幸いして延焼をある程度は防いだ。

  南新築地と呼ばれた大沢川原にいた同市の菅森幸一さん(78)は、桜城国民学校2年生だった。「われわれが空襲だと認識したのは初めて」と話し、不吉な予感を思い起こす。既に本土上空の制空権も失われ、「軍部はひた隠しにしても伝わってくる。東京辺りから逃げてくるのがいっぱいいた。疎開していた人は3月10日前からいたが、大変だとはなかなか口に出せない時代だった」。

     
  大分県の市民団体の豊の国宇佐市塾が公開した8月10日の盛岡空襲の映像  
  大分県の市民団体の豊の国宇佐市塾が公開した8月10日の盛岡空襲の映像
 


  菅森さんが星条旗の白星を目に焼き付けたのは、45年8月10日の盛岡空襲だった。本土近海の米空母「ハンコック」から出撃した艦上戦闘機「F6Fヘルキャット」「F4Uコルセア」、艦上攻撃機「TBFアベンジャー」の編隊が断続的に襲ってきた。再び盛岡駅前が狙われ、鉄道車両やガスタンクなどが爆弾、ロケット弾、機銃掃射の攻撃を受けた。

  菅森さんは「東部軍管区情報が放送される。『敵機は目下、北上川を北上中』などという話が入ると、空襲警報が鳴る。ブーッブーッと断続的に鳴る。警戒警報はブーッと鳴るだけで、もう毎日なので防空壕に入る人はいなかった」。

  機銃弾に震えながら初めて目にした機体は、濃紺に白星のマークを染め抜いていた。

  「見えるも何も。家に大きな杏の木があった。その木に触るかと思うほど低く飛んで、搭乗員の顔が見えた。艦載機は怖かった。B29は見えなかったが、艦載機は頭の上をガンガン回り、キーンと音がする。ダダダダと音がして家が揺れる。合間にドカーンと音がして北上川に落ちたら砂、砂利、水が一緒になって屋根に落ちてくる」。硝煙とともに、新しい支配者の靴音が迫っていた。

  岩手の戦災史を研究する花巻市の加藤昭雄さんは、B29の盛岡空襲について、米国の戦略爆撃調査団報告などを調べた結果、「よく分からなかったが、何か特別な狙いがあったのか。東京大空襲のついでという話は、盛岡までの燃料を考えれば違うと思われる。何かを偵察しながら爆弾を落としたのかもしれない」と話し、研究の余地を認める。


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