盛岡タイムス Web News 2015年  7月 14日 (火)

       

■  〈幸遊記〉235 照井顕 佐藤文子の恵翠刻字展


 「ココアを飲みながら、ここに座って景色を眺めると、まるで外国にでも来たようです。ママの小春さんも外人さんみたいだし」とあふれる笑顔で話す佐藤文子さん(82)。「家の中で振り向こうとして転び、腰を骨折。寝込んでから歩行困難になったけどジョニーに来たい一心でリハビリをし、歩けるようになった」と、杖を使い息子さん夫婦と一緒に、ニコニコ、ニコニコ、笑みを浮かべながらやって来る。

  息子の潤さんと音楽を通して知り合った1993、94年頃、彼の家を訪れた時、玄関に飾ってあった「刻字」の素晴らしさに大感動。問えば作者は彼の母・文子さん。作品の朱印字の刻みは、父・勇さん(86・篆刻〈てんこく〉家)の担当。文子さんは恵翠(けいすい)という雅号を持つ書道教室「恵翠書院」の先生であり、刻字作家でありました。

  その90年代、僕は陸前高田大町商店街が開設した「まちかどギャラリー」の展示企画を手伝っていたこともあって、恵翠さんに何度も展示のお願いをしたものでしたが「私ごときではね」と、断られ続けた。それでも一家で陸前高田の僕の店まで来てくれたこともありましたが、個展はできずじまいでした。そんなことから、実は最近、開運橋のジョニーの壁を利用した、店内ギャラリーを開設したので、20年越しの思いをぜひ実現させてほしいと頼み込んだら、「いまだにそう言うんじゃ仕方ないね」と、佐藤恵翠さん初めての「刻字作品展」の承諾を頂きました。何といううれしさでありましょう。

  佐藤恵翠さんはぜんそくを患いながらも30代の末に、県書道界の第一人者・吉丸竹軒氏に師事、北日本書道専門学院の第一回卒業生として世に出たのでした。それまでは近所の子どもたちに無料で教えていた彼女だったが、竹軒氏が揮毫(きごう)してくれた「恵翠書院」の看板を掲げてからの塾は今年でちょうど40年。刻字は、毎日展の審査員だった一関の千田得所氏に50代から師事し、先生が亡くなるまでの13年間、無我夢中で書き彫った作品。「敬不忘」「嘉福成基」家の玄関に掲げられている作品には宅配のお兄さんでさえも「こんな素晴らしい作品に出合ったことはまずありません」と感動して帰るほどである。2015年8月1カ月間の展示会楽しみです。
(カフェジャズ開運橋のジョニー店主)


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